健康の定義(目的から手段へ)

そもそも「健康」って何でしょう?国連システムの中にあって保健について指示を与え、調整する機関であるWHO(World Health Organization)は、WHO憲章で次のように定義しています。「健康とは身体的、精神的ならびに社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病がないとか、虚弱ではないということではない。」WHO憲章(1948年)」

最近では、もう少しわかりやすく「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。」とし、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです。と説明されています。

最近、私がこれまで知っていたWHOの健康の定義の他に、もう少し進化した考え方が出てきているようなのでご紹介致します。それはオランダの考え方です。健康とは「社会的・身体的・感情的課題に直面した際に適応し、自ら管理する能力である」(2009)この新しい考え方を「Positive Health」と言います。

これまでの考え方は、「Negative Health」(ネガティブヘルス)で、これは病気にならないで日常生活を送っている状態をいいます。病気のサインを示さない状態という消極的な健康状態のことを「健康」と言っていました。

これに対して「Positive Health」(ポジティブヘルス)は、生活の質(Quality Of Life)や、人間の潜在能力と関係に着目しています。前者は日常生活の中で学習に集中し、身体を鍛え、友人と楽しく遊ぶことなどの、自分から進んで行動する内容を含み、後者はその人の優しさや決断力などの特性とも関係します。この「ポジティブヘルス」は人の生きる力や創造力といった、素晴らしい健康能力を示す積極的な健康状態のことを言います。この考えは、病気の予防・治療、回復などを主としてきた従来の医学が考えていた健康とは別の健康状態なのです。

この様な考え方を概括するとこうなります。これからの健康づくりの視点

1 健康は本人の責任ではない  →Social Determinants of Health(健康の社会的決定要因)

2 社会的・環境的要因への着目 → 同上

3 健康は Positive Health である    → Positive Health

こうした考え方によって健康観にも変化が出ています。過去の健康観→近年の健康観

①静的 → 動的

②状態 → 資源・能力

③目的 → 手段

④生物学的側面 → 全人定側面

今後、行動変容を促すことに有効な考え方も提唱されています。それは「ナッジ理論」(行動経済学)の活用です。厚生労働省でも、ナッジ理論を活用した受診率の向上

施策をハンドブックとして整備しています。ナッジ理論の四つのポイントというのがあります。

1 Make it Easy(簡単にする)

・「“選ばなくていい”は、最強の選択肢」

・「明確な指示には素直に従う」

→いつでも良いが受診率が下がる、日時を指定した方が受診率アップ

2 Make it Attractive(魅力的にする)

・「得る喜びよりも、失う痛み」

→これをやると○ポイントもらうではなく、これをしないと○ポイント減、の方が効果的。

3 Make it Social (社会化)

・「みんな気になる、みんなの行動」

・「約束は守りたくなるのが、人の性」

4 Make it Timely(タイムリーに)

・「狙うのは、心の扉がひらく瞬間

こうした行動経済学考え方を下にした仕組みづくりも徐々に行われているようです。私としては、健康は「目標」ではなく「手段」という考え方に、強く共感しています。私自身の講義においても、こうした健康観を下にしてお話しさせて頂いています。私自身の行っていることを例に挙げれば、「毎朝のウオーキングは健康の為(目標)ではなく「四国歩きお遍路」の為(手段)に行っている」ということになるでしょう。

最近に健康に関して、マスコミからは様々な健康脅迫がまいの情報が山のように流されない。これをやらないと病気になります、歩けなくなります、認知症になります等々。こうして、高齢者などをターゲットにした様々なサプリメント市場が賑わっています。健診などにおける保健指導などでも、この様な感じのことを言われたりします。健康という言葉に不安をかき立てられていると言っても過言ではない感じがします。

こうした状況に対応するためのも、今回ご紹介した「Positive Health」といった健康観を持って、日々を前向きに、そして楽しくい暮らす先に「健康」がある。こんな考え方を持てる能力(Positive Health)を身に付けたいものです。

出典:経済産業省 ヘルスケア産業課 藤岡 雅美

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