地域住民と共に学ぶ地域福祉フォーラム(富谷市社協)

富谷市社会福祉協議会が主催し行政が後援する第4回地域福祉フォーラム2021が開催されました。昨年はコロナ禍にあってやむを得ず中止となりましたが、今年は、社会福祉協議会の英断と万全の態勢を整え実施され、約300名の参加があったと係の方が話していました。基調講演には、予約の取れないお店として有名な「アル・ケッチャーノ」オーナーシェフ奥田政行氏を迎え、「食を通した人づくり地域づくり」と題してご講演を頂きました。若干の休憩をはさみ二つの分科会に別れ、パネルディスカッションが行われました。第1分科会は、「地域から、あなたの取り組み発信」。第2分科会は、「コロナ禍における事業所・企業の取り組み」でした。内容は別添資料を参照下さい。

基調講演は、奥田政行氏の21歳で1億円を超える借金を背負わされた事から始まり、波瀾万丈の中にあって、不利な地理(取り残された街)の中で「この土地には何かがあるはずだ!」と、地域のありとあらゆるものに目を向け(地域包括ケアで行われている地域の宝探し)何ができるのかを模索し続けています。その過程で、地元に残る豊富な食材に目を付け、45歳までに、この庄内地域を「食で元気にする」と目標を定め、その為には今何をすべきかの計画を立て活動を開始し、2000(平成12)年にお店を開店しています。

地元の豊富な食材に気づき、その食材に新たな使命を与える(独創的なメニューを生み出す)ことで少しずつ評判を得るようになっています。地道に頑張り評判が広まると、周りから様々な話が寄せられるようになり、「情熱大陸」「ズームイン朝」からオファーが寄せられ、様々な雑誌への投稿が求められるようになっています。そのような中にあっても、「我」を出さず、山形の食材をPRしてもらうことを条件に出演しています。食と観光を組み合わせる、食と文化遺産を組なわせるなど、あらゆる資源に食を絡ませることによって、新たな発展可能性を切り開いています。今辺の下りは、大変説得力があり、地域福祉の推進にも応用できる感じがしました。彼は田舎のレストランは公民館の役割を担っていつとさえ語っています。とても刺激的な時間を過ごすことができました。また、二つの分科会でも地元の実践者や企業のCSR担当者が地域との関わりについて語ってくれました。

富谷市で行われている、今回第4回目を迎えた「地域福祉フォーラム」は、実は長い歴史があります。そもそもの始まりは2000(平成12)年に遡ります。当時、富谷町に整備が予定されていた特別養護老人ホームの開所(2001年6月)を前にして、特別養護老人ホームを含めた「とうみやの杜」(保健福祉総合施設群)に対する町民の理解を得る為に、色々の立場から地域福祉について考え互いに理解し合う学びの場を設けようとして「地域福祉フォーラム」が富谷町を中心として社会福祉法人や町民・ボランティア団体が参画して行われたのです。

この地域福祉フォーラムは、特養の運営を担う社会福祉法人及び特別用語老人ホーム等の職員が富谷町(行政)と一緒になって、企画・運営しています。また、活動の発表は、富谷町民や町内のボランティア団体が学会方式に則り、口頭発表及びポスター発表を行っています。

この事業は、2000(平成12)年の第一回を皮切りに2014(平成26)年まで15回を数えています。2013(平成25)年の記録を見ると538人の参加を得、参加者の満足度は92%とありました(富谷町地域福祉計画)。

その後、町長の交代を機に、所定の役割は終えたということで第16回目はありませんでした。しかし、富谷市社会福祉協議会の地域福祉推進に大きな役割を担ったという強い意志の下に、今度は社会福祉協議会が主催者となり、2017(平成29)年に新生「地域福祉フォーラム」が行われました。以降、昨年の中段を経て、2021(令和3)年12月4日に第4回地域福祉フォーラム2021が開催されたのです。

2014(平成26)年度地域福祉フォーラム
発表者を取り囲むようにして聞き入る町民
家族で参加
自治会が発表

改めて富谷市で行われている「地域福祉フォーラム」を見ると、住民参加型の学びの場づくりに約20年近くの実績があると言うことです。今日、地域共生社会や地域包括ケアシステムの構築が我が国の福祉分野では喫緊の課題として取り上げられています。この様な状況下で、こうした20年の地域住民の学びの機会が持たれてきた意味はとても大きいように感じています。まちかどCaféやユトリストクラブ等々、様々な住民主体の社会資源が地域福祉を「救貧的視点」ではなく、地域の潤いと活力を生みだす「居場所」として機能していると感じています。

また、富谷市内では、「富谷ユネスコ協会」が2020年)5月16日設立・加盟承認がなされ、様々な活動を展開しています。UNESCO(国連教育科学文化機構)の理念は、ユネスコ憲章序文「戦争は人の心の中に生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」です。富谷ユネスコ協会は、この「平和」を自らの言葉と解釈で「だれもが安心して日々の暮らしを営めること」と受けとめ、その実現のため活動に取り組んでます。

富谷ユネスコ協会 – 富谷ユネスコ協会|Tomiya UNESCO Association (tomiya-unesco-association.org)

この様にして様々な取り組みは、富谷市民を重層的に包み、市民の安心安全を住民自らも加わって築きあげようとしています。こうした官民協働の成果は、「住みたくなるまち日本一」を目指す力となり、その実現に大きく貢献していると感じます。街の幸福度&住み続けたい街ランキング2021<東北版>」では、「住み続けたい街」「街に誇りがある」分野において東北1位、「街に愛着がある」分野では東北2位となるなど、具体的な数値としても表れています。

地域福祉はとても地道な活動の先にしか明かりは見えてきません。それも住民の主体的な関わりが物を言います。この為にも、住民及び行政の学びの場はとても大切です。この学びの場づくりを精力的に進めている富谷町社会福祉協議会は高く評価されて然るべきと思っています。

令和3年度 第4回地域福祉フォーラム2021
基調講演 奥田政行氏
第2分科会「コロナ禍の地域貢献活動」

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

地域住民と共に学ぶ地域福祉フォーラム(富谷市社協)” に対して1件のコメントがあります。

  1. 地域福祉フォーラムの準備から携わっていたので、こうして取り上げていただきとても嬉しく思います。本間先生が書いてくださったように開催には勇気と決断が求められました。コロナ感染症がどうなるかわからない段階から準備を始める必要があり、議論を重ねました。でも、こうして交流が絶たれてしまっている今だからこそ必要なのではないか・・・中止せざるを得ない状況になっても理解していただけるだろう、ということで決意をしました。

    アルケッチャーノの奥田シェフの講演が素晴らしいことは、いろいろな方が熱く語っていたので存じ上げていたのですが、実際にお聞きできたことは本当に嬉しいことでした。内容は本間先生の記事に書いてある通りですが、聞いた方たちがなぜ熱く語るのか納得がいきました。今回聞いてくださったみなさんも、その素晴らしさ熱く語っていました。仕事への情熱、地域や人を思う愛情、創造的な発想と実行力、人生を自分の力で切り拓いていく姿勢・・・「講演がこの倍の時間あっても良かった」と何人も方に言われました。「時間がこの倍あっていい」と言われる講演はそうはないと思います。この記事を読んでくださったかたも、もし機会がありましたら万難を排して聞きに行くことをお勧めいたします。

    富谷市社会福祉協議会が地域住民のために「今こそ必要」と英断して開催した「地域福祉フォーラム」。その気持ちが参加くださった方たちに伝わり、富谷がさらなる素敵な市となることを心から願います。

    ご紹介ありがとうございました。

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