干柿のお福わけ

「満80歳、栗駒山頂に立つ」(8月29日)で紹介したちよのさんから「お福わけ」を頂きました。東北学院大学で主催するCSWスキルアップ講座に講師をお願いした、大通寺(栗原市築館)金田諦応住職の所に用事(後日記載予定)があり、そのついでに栗駒登山後の様子をうかがいにちよのさん宅を訪問しました。

以前と変わらずとてもお元気で、毎日を忙しく過ごしている様子でした。私が行くなり、同級生の一枝さんを呼び出し、あっといいうまにテーブルいっぱいに皿が並びました。「夕食食べていって」と、出るわでるわ普段食べない料理の数々。ゴーヤのきんぴら風煮付け?千枚漬け、ベーコンのいっぱい入ったジャガイモとニンジンのいわゆる肉じゃが、栗と金時豆の入ったおこわ等々、料理の名前は覚えていないのですが、味付けが何とも素朴というか優しいというか、加えた調味料と素材がうまく組み合わされ、自然と箸が進む身体に優しい品々でした。

ちよのさんの17歳家出話で、しばし話を盛り上がり、孫の成人式の時の前撮り写真を見せて頂いたりしながら、「二十歳の時に戻って、このような和服を着てみたい、私の時は手縫いの和服だった」と語っていました。女性は何歳になっても、このようなきれいな和服を身にまとってみたいのだと感心して聞いていました。思いっきりお化粧して孫の和服を借りて一流の写真家に写真を撮ってもらったら?と話し、みんなで大笑いしました。

帰りには、干し柿や野菜、それのご主人作の田舎の白酒(ドブロク)、一枝さんからは、優しい塩みのとても美味しい梅干しを頂きました。久しぶりに実家に帰って来た孫に野菜をたんまり持たせるお祖母ちゃんの様相でした。なんとも心が温まるお土産でした。今年は、柿が不作で多くは取れないのに加え、天候が不順でいつものように風が吹かないので、干し柿が柔らかいままなのだそうです。例年は1万個ほど吊すとのことですが、今年は6千500個程度になっているといっています。渋柿は、近所から「取っていって」と言われ頂いたものを夫婦二人で加工して干し柿に仕上げています。できたものは、一切売らずに近所に配っているのだそうです。

お福分けの品々
軒下に吊された干柿

こうして、幼なじみとお茶したり野菜作りをしては近所に配り、郷土料理の作り方を高校の生徒に伝える等々しながら毎日を忙しく過ごしています。なんと充実した日々、なんと素敵な後期高齢期を過ごしているのだろう。そしてそこには、「お互い様」の文化、「お福分け」の生活習慣が生活の豊かさを支えています

きっとこの人たちは、遠からず他界するでしょう。失礼な言い方になるが右肩下がりです、しかし、こうした人達の生き方や生活文化は、若者に伝えられ、彼らの感性が加えられて新たな生活文化としてこの地域に引き継がれて行きます。いわゆる右肩上がりの生活が築かれていくのです。

こうして高齢者の知恵や生き方がつながっていく。こうして高齢者は、自身の知恵、大げさな言い方をすれば生活文化を伝えることで、生きた証を残すことができる。なので、高齢期は、決して無用な何も出来ない生産性のない高齢者の末路ではなく、新たな生活文化を生み出す土壌となるのです。

私たちは、こうした高齢者と若者の出会う場を設けることに、とても大切な役割を担う必要があります。自分の親が、ご近所の高齢者が、かけがえのない存在として自分自身を振り返ることが出来るよう、そのような場づくりをしたいものです。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

干柿のお福わけ” に対して3件のコメントがあります。

  1. 阿部 優 より:

    ちよのさんの行為は、自己充足的行為です。
    最近学びました。本間先生に会えて嬉しかったのが伝わってきます。

    『文化伝統や思想を伝える』について。祖父母の文化は父母には伝わりにくく、孫には伝わりやすい。もちろん親の背中を見て、しっかり受け継ぐ家系(商売人など)もありますが、年代が近いと受け入れ難いのでしょうか。おばあちゃんに対して反抗期とかないような気がします。

    孫にとって祖父母の話は素直に受け入れやすく、不思議と記憶に残ります。そこで、祖父母世代と孫世代をつなぐ役割をできたらと考えています。

    本間先生、今度相談に乗ってください。

  2. H.Y より:

    ほんと、たくさんのお福わけをいただきましたね。お野菜もちよのさんちの畑で作っているのでしょうか。ご近所からいただいた渋柿、どんなお話をしながらお父さんと一緒に皮を剥いているんだろうと思いました。剥いた皮も干して沢庵漬作るときに入れるのかな~。それにしてもいつもは1万個?丸森町のころ柿もびっくりですね😲☝️柔らかい干し柿は、本間先生の渋い縁側に今から干しても充分固くなるはずですよ。どぶろくも懐かしい~

    お婆ちゃんの知恵袋、生き方をたくさんの子供、若者はもちろん、初老に足を踏み入れた私も是非ともお相伴に預かりたいです。

    随分前、どこかのデイサービスだったか施設だったか、美容部員による「お婆ちゃまたちのお化粧教室」を行ったところ、手鏡を持ち、口紅ひとつつけただけで目がキラキラしていたというお話を聴いたことがあります。

    そうそう、ゴーヤのきんぴら風煮付けは、多分ゴーヤの佃煮でしょうか。先生のネーミングも美味しそうだなと思いました😋

  3. スマイル より:

    ちよのさんや一枝さん、本間先生がいらしてくださってどれだけ嬉しかったことでしょう。おもてなしの数々がそれを物語っています。歓迎される方もする方も、とても温かな幸せな時間だったことと思います。互いを想いあうって素晴らしい!

    干し柿を作る数を聞いて気が遠くなりそうになりました。でも、それを毎年何気なくしているんですね。きっと「大変」だけでなく「楽しみ」や「喜び」として・・・本当に豊かな人生です。伝記で語り継がれたりすることはないかもしれないけれど、暮らしを大切に人生を生きることほど偉大なことはないように思います。本間先生がおっしゃるように、その価値が自然と受け継がれていって、先の未来を生きる人たちの人生も豊かになったら素晴らしいですよね。先生がおっしゃるように、間をつなぐ人たちが大事になってくると思います。

    今、世の中は変わり目にあるように感じます。「時代が変わっても大切なものってなんだろう?」と、考えるチャンスでもあると思います。
    文章とお写真を拝見しながら、そんなことを思いました。
    立ち止まって考える時間と機会をいつもありがとうございます。

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