日本認知症ケア学会に参加しての感想
第27回日本認知症ケア学会大会 テーマは『みんなの認知症ケア ―生命の誕生から終焉まで ―』に参加してきました。目的は二つです。加藤伸司(東北福祉大学教授兼認知症介護研究・研修仙台センター所長)は、今年度で退官すると聞いていたのでご挨拶したかったことと頭のリハビリです。この学会に参加すると専門士単位8単位もらえますが、これはおまけ程度です。印象に残った内容の一部を振り返り後々の参考にしたいと思います。
新幹線の中でモールス信号の練習をしながら東京国際フォーラムに向かい、新幹線を降りてからは、事前に調べておいた地下道経由の通路がなかなか見つからず、想定時間の何倍も時間を費やしようやく届きました。お登りさんそのものでした。東京国際フォーラムに着いてからも会場が広くて上がったり下がったり散々でした。終わってからは息子の住む上野まで、これまたJRや地下鉄などを乗り継ぎ向かい、この日だけで4㎞も歩きリハビリの域を超え、右足は関節がキリキリしてしまいました。少々無謀だったのかもしれません。しかし、加藤先生や高知大学で教鞭を執るようになった矢吹先生にお会いするという最大の目的は達成できたので、これで良しとしています。
教育講演03「意思決定支援における「ジレンマ」をどう捉えるか;SSR要因分析と多層的支援モデルの構築」は、自分の意志を表現するのが難しい認知症を持つ人への支援とはどの様なものなのか、関心があったので受講しました。
現場では、如何にして本人の意志を捉え実現していくかという「ジレンマ」に直面しているといいます。しかし、報告者(明治大学社会学部 金先生)は、これらのジレンマを単なる困難としてでは無く「より良い支援」に向けた不可欠要素と捉え直して取り組むことこそが、専門職の向き合うべき姿勢だと強調しています。そして、このジレンマを克服する手段として開発した「SSR要因分析」の説明を頂きました。このSSR要因分析の印象は、「国際生活機能生活分類」と同様の趣旨で設計されているように感じました。この為、新たなSSR要因分析は、その設計思想を知る程度に留め、温めて国際生活機能分類を生かして認知症を持つ人の意志を把握するようにしたいと思いました。
次は、日本老年社会科学会共催シンポジウム「認知症の人と家族への支援について考える」
座長は加藤伸司(東北福祉大学/認知症介護研究・研修仙台センター)で矢吹知之(高知県立大学社会福祉学部)も発表者として登場しています。ここでの演者は加藤先生が選んだということでした。流石です、素晴らしいパネルになりました。終わってから加藤先生そして矢吹先生と久しぶりでお話しできました。娘のことも話題に出たりしてとても和やかにかつ今後の認知症研究などにも及びとても充実した時間でした。
ここで印象に残ったのは、松本一生先生(松本診療所)の人生を支えるケアです。35年間のケア実践を通じたあるデータでした。善意溢れた熱心なケアと悪意のあるケアとの比較でした。善意溢れる熱心なケアでの不適切行為は75回で死亡例が10件(13.6%)。一方の介護家族による悪意のケアでの不適切行為は224回で死亡例が3回(1.3%)でした。
この結果から感じたのは、善意溢れた熱心なケアにあるであろう「良かれと思って」というケア行為です。この良かれと思っての行為は、他者に支援を求めたり他者の意見を聞こうとしないリスクが肺胞していると感じたのです。熱心なあまり自分のケアにのめり込み周りが見えなくなってします。こうしたことが最悪に事態を引き起こしているのではないかと考えたのです。発表者も結論としては、「伴走する」ことの大切さを訴えていました。私たちは、家族ケアの担い手に対して、「常にそばにいて支えますからね」というメッセージを発信し続けることの大切さを学びました。
教育講演11「認知症・MCIと消費者被害;地域連携による予防・対応戦略」演者は成本迅先生(京都府立医科大学大学院医学研究科)です。民生委員児童委員をしているとMCIかと思われる方が結構いるように感じます。
地域の方々や私自身直接感じたことを基にして判断するCDR臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating)と、言うのがあります。これは、認知症の重症度を評価するためのスケールの一つで、このスケールの特徴は、認知機能や生活状況などに関する6つの項目を診察上の所見や家族など周囲の人からの情報に基づいて評価する「観察法」です。私たちがよく知っているMMSEは対象者にインタビューしなくてはいけないのですが、CDRは観察法である程度の評価が出来るので、これを意識して様子を見聞きしています。そうしないと、ちまたで「認知症ぽい」「認知症らしい」等々、一つ間違えば差別になってしまうことが起こりかねないと思い、素人ながらCDRを当てて見るようにしています。当然、評価は出来ないので、参考として保健師等にお話しして対応の参考にしてもらっています。
この発表で最大の学びは、軽度であるが故に、複雑な生活行為では「小さなつまづき」がとても多いということが見逃されているということでした。IADLが自律しているが、この小さなつまづきが地域生活を困難にしたり消費者被害を受けやすいという指摘には納得でした。私たちは、この軽度ということを認知能力に重きを置いているように感じ、大いに反省する機会となりました。
最後は、シンポジウム3「超高齢社会におけるエンドオブライフ・ケア」です。ここでは、最後まで支える理論と実践が奉告されるというので参加しました。会田先生(東京大学)からは、日本老年医学会における「高齢者の人生の最終段階に於ける医療・ケアに関する立場表明2025」について詳細な報告がありました。特に、立場表明に於ける「尊厳」の解説がとてもインパクトがありました。尊厳とは、自尊感情を刺激し自己肯定感を促す等々、これまでの尊厳の説明を超える内容でした。
また、ターミナルまで付き合うという石原先生(石原クリニック)、桑田先生(青梅慶友病院総婦長)及び武田先生(GH福寿荘Ⅱ施設長)の実践報告は、正に尊厳に重きを置いた関わりに徹しているものでした。人生の最晩年にこうしたケアを受けられることは、本人のみならず御家族に対しても自己肯定感を持って頂けるのではないかと感じました。日本に、こうしたケアを行っている方々がいることに誇りと安堵を感じました。
今回の認知症ケア学会参加は、今年度末に退官する加藤先生やその弟子の矢吹先生にお会いすることが最大の目的でしたが、それと同様な学びの機会を持ててとても満足しています。無理して出かけていって本当に良かったと思っています。ここでの学びを地域社会に何らかの形で還元できるように、これからも民生委員児童委員とひての活動に生かして行きたいと思っています。








