縮小ニッポンの衝撃

―2060年まで、日本の人口は約30%減少する―

ここ数日、『縮小ニッポンの衝撃』(NHKスペシャル取材班、2017『縮小ニッポンの衝撃』(株)講談社.)を読んでいます。

「私たちが生きる日本、これから先、どんな未来が待っているのだろうか」との書き出しから始まります。人口減少といわれて久しいのですが、改めてその急激なカーブに驚いてしまいます。更に、聞き慣れない言葉として「無居住化地域」というのがあります。過疎地域の無人化です。そして、過疎地の無人化というより、日本全域の過疎化ともいうべき事態だと指摘しています。正に人口減少は静かな「有事」なのです。

人口減少の現状は、地方の過疎地域だけのことかと思っていたら、大都市東京23区内でも始まっているといいます。その例として取れ挙げられいるのが東京都・豊島区です。人口の社会増にあぐらをかいている内に自然減が進み、ついには社会増を自然減が上回り人口減少が顕在化し、税収の減少に加え社会保障費用が増加し、自治体の財政悪化により、住民サービスの見直しが喫緊の課題になっているといいます。

北海道・夕張市の日本初めての自治体破綻の現状も詳しく述べられています。財政再建団体になると、どの様な生活環境になるのかがリアルに描かれています。この様な状況は何としても避けなければならないと思ってしまいます。

縮小ニッポンの未来図を描き出すとして紹介されているのが島根県・雲南市です。この状態にいち早く気づいた行政は、住民自治組織に地域の未来を託し、「協働」の場を積極的に設け、生活に身近な行政サービスを住民の手に委ねて乗り切ろうとしています。私も、以前、ここに視察に行こうとしていました。

また、島根県・増田市や京都府・京丹後市では、農村撤退という選択肢を持ち、集落の消滅を座して待つくらいなら、余力のあるうちに麓に皆で降りる集団移転を選択しようというものです。いわゆるコンパクトシティーの考え方です。生活インフラの集約化効率化が避けられない現状を描いています。

2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。この年以降、日本は5人に一人が75歳という超高齢社会に突入します。国では、地方の産業を創出し人口の流出を防ごうとする「地方創生」を2014(平成26)年から5ヶ年計画で進めています。東京圏から地方への人口提出を4万人増やし、地歩からの人口転入を6万人減らし、10万人の転入超過を解消する計画です。しかし現状はどうか。2016(平成28)年になっても東京圏は依然として11万人超の転入超過が続いており、その流れを止める手立ては見つけられていません。

私たちは、この現状を直視し、この問題を行政任せにするのではなく、我が事として一人ひとりが痛みを分かち合いながら、縮小社会を受け入れる「撤退戦」に身を投じなければ成らないのです。最近、行政などでよく言われ始めている、住民と行政の「協働」は、単純な行政コストの削減レベルの議論ではなく、市民生活の自己責任範囲をどの様にするのかの議論や新たな生活文化の構築としての「地域共生社会」の推進などの領域も含んだ、足下の見直し議論が必要です。

機会を設けて、再度詳しく本書に書かれている「縮小ニッポンの衝撃」を紹介したいと思っています。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

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