毎朝のミーティング

南三陸町被災者支援センターでは、毎朝ミーティングが行われていました。出席者は、実質的な支援センターの管理者(唯一の社協プロパー職員)を筆頭に各サテライトセンターの管理者である主任生活支援員及び看護師です。

応急仮設住宅での生活が落ち着くまでは、生活支援員の各戸訪問が365日休みなく行われました。理由は簡単です。被災者の心労に休みはないからです。事業運営や職員のローテーション等大変でしたが、皆さん頑張ってくれていました。

毎朝のミーティングでは、全日の訪問の様子や特に気になったことなどを報告してもらいます。この毎朝のミーティングが終わると急いで各サテライトセンターに戻り、打合せの内容を全員に伝達周知を図ります。この様なシステムになっているので、主任生活支援員は、とても熱心に一言も聞き漏らさないぞ!という感じでメモを取っています。毎朝、全日の活動内容を説明し、帰れば打ち合わせした内容を分かりやすく同僚に説明しなければいけません。それが毎日ですから、気持ちが休まる間もなかったと思います。それはそれは大変なことだったと思います。

私にとって毎朝のミーティングは、単なる打合せや伝達会議ではなく、カンファレンス・事例検討会に位置づけていました。見守り支援などの経験がある人はほぼ皆無です。この為、被災者との関わり方や発言等々、全てが手探りでこれで良いのかダメなのかが分からず、不安な気持ちを持ったままで各戸の訪問をしています。

この様な状況下では、それぞれの振る舞いや発言に対して、「それで良いんだよ」とか「そこはこう言ってみては」等々、実際の場面に即して出来るだけ早く、評価をしてあげることがとても大切だと考えていました。支援員さんたちの疑問には出来るだけ早く応えてあげる、それがスキルを高めていくことにおい、ても大切だと考えたのです。特に、経験のない人達に対しては、こうしたリアルタイムで具体的に説明する、これが最も効果的だったと思います。座学より、カンファレンスがより効果的にスキルを高められると思っています。

毎朝のミーティングも、こうした支援員さんの疑問に出来るだけ早く応えることを意識していました。もう一つ大きな狙いがあります。それは、一箇所で見つかった困難事例や不穏なお動きは、必ず他の場所でも起きます。なので、見つかった事例にしっかり対処することで、これから起きるかも知れない事例を未然に防止したり、迅速な対応が出来るようになります。一つの事例をみんなで共有して不測の事態に備える、この宇王この様な意味でもとても大切だと考えたのです。

色々なビックリするような事例があります。それは次回に取り上げます。今日は、毎朝のミーティングで、毎日のように緊張の時間を過ごした主任生活支援員さんの大変さを想像して下さい。本当に大変だったと思います。何せ、全く経験のないことだらけの中で、待ったなしの対応を迫られるのです。南三陸町の生活支援員は直ぐ分かります。どの様な研修会や会議に行っても、きっちりメモを取っている姿があるからです。それは、きっと、このような毎朝のミーティングの習慣が身についているからではないかと思っています。

朝ミーティング震災から約1年後(2012/04/11)

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

毎朝のミーティング” に対して5件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    毎朝のミーティングでは、前日の訪問から特に助言を頂きたい事例を1件ピックアップして参加していました。それに対して先生から、実に丁寧に分析と助言がその場で行われ、その日のうちに全サテライトで共有されるシステムでした。
    当時、このミーティングがみんなの心の拠り所であり、実践とタイムリーな学びの両輪があったからこそ、一人ひとりが考えながら、様々な課題に真剣に向き合える様になっていきました。
    それは、自分達の課題が全体の課題であり、私達は常に独りではないことを実感出来たことが大きかったと思います。

    サテライトのメンバーも個性豊かな面々が居て、考え方も様々です。それでも、みんなが同じ方向を向いて歩むことが大切だと、1人も孤立しない様な工夫も必要でした。
    中国から嫁いてきた支援員は、文化の違いや言葉の微妙なニュアンスが理解出来ないことから、訪問には自信を失いかけていました。ある日、お茶っこ会で太極拳の先生になってもらおうと、にわかに昼休みの練習を重ねました。本人も一生懸命に解説用のフリップを作ったりBGMを用意して、参加者に楽しみながら体を動かす機会を演出してくれたのでした。

    そんな事もあったな〜と、とても懐かしく思い出しています。

    1. スマイル より:

      記事の最後にある「南三陸町の生活支援員は直ぐ分かります。どの様な研修会や会議に行っても、きっちりメモを取っている姿があるからです」という文章が全てを物語っています。「それが習慣とならない限り本物とは言えない」というような言葉を聞いたことがあります。まさに「習慣となった本物の事例」だと深い感銘を受けました。

      ここに書かれてあることは、本当に大切なことで、誰にでも理解できる内容なのに、実現が極めて難しいことでもあると感じます。なぜなら、毎朝そこにいてすべての人の課題や悩みに全力で応えようとしてくれる存在が必要なのですから。そういう存在は「必要だから配置しよう」とトップダウンで置いたとしてもうまくいかないでしょう。「想い」から始まったものでなければ「本物の事例」にまで行きつけないと思うから。月曜の記事を読むたびに、私の考えはそこに辿り着くのです。

      鈴虫さんの「自分達の課題が全体の課題であり、私達は常に独りではないことを実感出来たことが大きかった」という言葉が心に沁みます。そんな心の拠り所が南三陸町にあったことに心から感謝したい気持ちでいっぱいです。

      1. 鈴虫 より:

        スマイルさん、このコメントの返信に相応しくないかもしれませんが、頭に浮かんだ事です。
        誰かの為の行為はどんな時にも一方向からだけの作用ではなく、必ずと言っていいほど相手から受け取るものが有ると思うのです。
        それは目に見えるものばかりではなく、人の想いや人生の学び、我が身を省みるとき等。
        これらは、それに気づけた人だけが受け取ることが出来る宝物です。
        私はこんな働きをしましたという時に、その何倍もの恵みを頂いていることに気づき、素直に感謝の気持ちが持てるなら、どんな苦労を伴ったとしても幸せな時を過ごしたといえるのではないかと思うのです。

        今、何故こんな事が頭をよぎっているのかよくわからないのですが、書き留めておきます。

        的はずれだったら、ごめんなさい。

        1. スマイル より:

          今この瞬間、鈴虫さんの心に浮かんだこと頭をよぎることがあるのだとしたら、それは見過ごしてはいけないことなのではないか、と感じました。それこそが、まさに「恵み」なのではないかと・・・。

          記事の中に『毎朝のミーティングで、毎日のように緊張の時間を過ごした主任生活支援員さんの大変さを想像して下さい。本当に大変だったと思います。何せ、全く経験のないことだらけの中で、待ったなしの対応を迫られるのです』とありました。毎朝立ち会っていらした本間先生の心からの実感だと思います。

          そんな中でも鈴虫さんは、何倍もの恵みをいただいたと心からの感謝を抱けているといます。この言葉を目の前にして、私は「幸せって何だろう?」とあらためて考えています。

          幸せは傍から見て「幸せそうだね」と思われることだけではないのだろうと思います。与えられた場所で自分なりに一生懸命やって、その時は必死でわからなかったことが、あとからあとから意味を持って蘇ってくる。本物の深い真実は、人生をかけて理解していくように、本物の幸せも、味わっても味わっても味わいつくせないほどの滋味をいくつになっても感じさせてくれるようなものなのかもしれませんね。

          月曜日に本間先生が書かれる記事を読みながら、鈴虫さんの心に尽きることのない泉が湧いてきているのではないでしょうか。『その何倍もの恵みを頂いていることに気づき、素直に感謝の気持ちが持てるなら、どんな苦労を伴ったとしても幸せな時を過ごしたといえるのではないかと思うのです』という鈴虫さんの言葉を読んで、私もそうありたいと思っています。

        2. 鈴虫 より:

          夜ふかしをして遅く起きた朝に、この様な深くて有り難いコメントが待っていてくれたとは!

          ここ数日、私は自分自身の心を覗き整理しながら、同時にこれまで少しずつ伺ってきたスマイルさんと地域の中学校との関わりに思いを馳せていました。

          過去には随分と荒れた時代を『クソババア』と罵られながらも辛抱強く見守り、それでも諦めずに関わり続け、今では地域まるごとで中学校を包みこむほどの関係性を築いて来られたこと。

          それらのお話に触れる度に、スマイルさんが「地域を良くしたい」という情熱に突き動かされていることを感じるのです。スマイルさんは、只々、その情熱のままに困難や苦労を力強く乗り越え、次の展開、また次の展開と繰り広げて来られたのでしょう。

          きっとそこには、小さな発見や大きな喜びが溢れていて側から見る以上の幸せをスマイルさんにもたらしてきたことでしょう。また、その喜びを纏った姿に共感出来るからこそ、地域全体が喜んでその渦に巻き込まれてきたのだろうと思えて、私まで幸せな満足感を覚えているのです。

          私も自分の場所で情熱を秘めた生き方をしたいと姿勢をただしています。

          スマイルさんありがとうございます、ハグしましょう!

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