かじってみよう社会学Ⅱ第13講『占いに惹かれるのはなぜ?』

日本人は占いが好きだと言われます。そう聞いて身の回りに目を凝らすと、易断、手相、トランプ、血液型、風水、タロット等々。また、よく目にするのに、新聞、雑誌それに朝のテレビ番組等に占いコーナーがあり、神社仏閣には占いクジが売っています。こうしたことは今に限ったことではなく、古代から現代まで、多くの武将や政治家・経営者が占い師の意見を重要な判断の参考にしてきたようです。もともと、占いは共同体の未来の運命を知るために神意を尋ねるものでした。夢の内容、亀の甲羅の割れ具合から神意をくみ取り、そこから自分たちの未来を予見し、行動を決定したのです。

私たちも、お正月に見る「初夢」は、その年の運勢を占う特別なものとして、無理むり縁起の良い夢を見ようとしたことありませんか。縁起が良い初夢の代表格は『一富士二鷹三茄』があります。一富士は、高い目標としての事業運の向上、願望成就。二鷹は、高い、掴み取るから、出世運・勝負運・目標達成。三茄子は、成す(生す)から蓄財・子孫繁栄・事業の成功の意。その先もあるようで、四扇で末広がりかけ開運や将来の発展。五多波草(たばこ)で煙が上に昇るにかけて運気上昇や出世。六銭座(ざとう)毛がない(怪我ない)で無病息災や家内安全です。また、悪い夢を見たときのおまじないもあるそうで、朝起きたら「昨日の夢は漠(バク)にあげます」と、唱えるのだそうです。また、夢の内容をだれかに話してしまうというのもあります。これは「話す」を「離す」にかけ、吉事に変わると言われています(ホントスカヤ)。

日本人が占いを好む主な理由は、心理的なカウンセリング(悩み相談)の代わりとして機能していることや、和を重んじる文化におけるコミュニケーションツールとして非常に優秀だからです。日本では欧米に比べて精神科や心理カウンセリングに通う心理的ハードルが未だ高く、その代わりに手軽に話を聞いてもらえる「占い」が身近な受け皿となっています。①病院で行われるカウンセリングの代わりとして気軽に悩みを話せる場所として、駅前や商業施設での占いの館等がその例で、安価で愚痴や相談を聞いてもらえる場となっています。②自己決定の負担を減らす役割も担っています。真面目で周囲に気を遣う日本人は、人生の選択に迷った際、占いに背中を押してもらうことで安心感を得ます。③物事がうまくいかない時、「今は運気が悪い時期だから」と運のせいに捉えることで、過度な自己嫌悪から逃れることができます。

また、日本人は文化的な背景と宗教観八百万の神という精神があり、特定の強い一神教を持っていません。こうした背景で、自然界のあらゆるものに神が宿ると考えるため、スピリチュアルや非合理なものを自然に抵抗なく受け入れます。初詣でおみくじを引くように、生活の中に「運を天に任せる」「偶然を楽しむ」エンタメ文化が古くから根付いています。

更には、コミュニケーションと調和のツールやわらかい会話のきっかけとしても活用しています。直接的な言葉を避ける日本人に適しており、「血液型」や「星座」の話題は初対面でも相手を傷つけずに距離を縮められます。朝のテレビ番組の「星座占いランキング」のように、学校や職場で毎日の軽い雑談のネタとして使われやすい特徴があります。

心理的なバイアス(錯覚)バーナム効果もあります。占いの結果に「誰にでも当てはまる曖昧な表現」が含まれていると、日本人は「自分のことをズバリ言い当てられた」と強く信じ込む傾向があります。このように、日本の占いは単なる迷信ではなく、ストレス社会を生き抜くための心のケアや、人間関係を円滑にする知恵として深く愛されています。

社会学では、占いが当たるか否かという科学的検証を超えて、「なぜ近代化・合理化が進んだ現代社会においても、占いは消滅せず広く私たちの生活の中で使われ続けているのか」という問いを中心に、その社会心理・構造・機能を分析する学問領域で、宗教学、社会心理学、ジェンダー論、メディア論などの境界域で活発に研究されています。日本人が占いを好む理由は、一つではなく、歴史・文化・社会・心理が重なっていると考えられています。社会学的には、次のような説明がよく挙げられます。

①不確実な社会で「安心」を得たい:日本社会では受験、就職、結婚、転職など人生の節目が多く、「失敗したくない」という意識も強い傾向があります。こうした時に占いは未来を正確に予測するというより、「この方向でいい」「今は待つ時期」「チャンスが来る」といった意味づけを与え、不安を軽減する役割を果たしています。

②宗教への抵抗が比較的小さい文化:日本では、神社でおみくじを引き、初詣に行き、仏壇を大切にしつつ、星座占いも楽しむというように、複数の信仰や慣習が共存して違和感を持たずにいます。そのため、「占いを信じるか信じないか」という二者択一ではなく、楽しめるものは取り入れるという柔軟な態度で占いに関わっているのが一般的です。

③「遊び」と「実用」の中間にある:日本では占いは娯楽としても定着しています。この為、テレビや新聞そして雑誌などで日常的に取り上げられています。例えば、「朝のテレビの星座占い」「雑誌の恋愛運」「血液型占い」等です。これらは深刻な信仰というより、会話のきっかけや気分転換として活用されています。

④人間関係を重視する社会:日本では「自分はどんな人間か」「相手と相性がいいか」ということへの関心が比較的高いと言われています。この為、「性格診断」「職場の人間関係」等を解釈・説明する、ひとつの物語を提供し人間関係を考える手がかり使います。

⑤「当たる」より「納得」:社会学や心理学では、多くの人は占いを絶対的な真実として信じているというよりは、自分の経験を整理するための解釈の枠組みとして利用していると考えられています。「最近うまくいかなかったけど、運気が低かったからかもしれない」という説明が得られると、目の前の出来事が受け止めやすくなります。都合の良い言い分けに使っているとも言えるかもしれません。

社会学から見た結論としては、「日本人は占いを信じやすい民族だから」という説明ではなく、むしろ「不確実な社会で安心を求める」「娯楽として楽しむ文化がある」「メディアが日常化させた」といた、社会的・文化的条件が重なった結果、日本では占いが広く受け入れられていると考えます。つまり、日本人にとっての占いは、未来を予言する技術というよりも、人生に意味を与え、不安を和らげ、コミュニケーションを支える文化的な実践として機能している側面が大きいのです。

多くの方々は、占いを信じ込むというより、適当に楽しみ吉凶を都合良く解釈して付き合っていることが多い様に思います。私の感覚では、結構、占いの結果に引きずられる傾向があるので、余り占いをみたりしません。たとえば、今日は食べものに注意するように等と占いに出ると、見るもの聞くもの全てが身体に悪いか、それを食べると悪いことが起こるのではないかと考えてしまい、いつも食べているもの以外には全く手を出そうとしなくなります。適当に聞き流せば良いのですが、何となく引きずってしまう気の弱さがあります。なので占いはみないようにしています。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です