南三陸町被災者支援でできなかったこと(南三陸町震災伝承)

先週金曜日(6月2日)は、理由は明確ではないのですが絶不調で前日から伏せっており、投稿をお休みしました。1200キロ走破した身体なのに、熱に弱い私は、いとも簡単に寝込んでしまいました。4日日曜日は、今一の体調でしたか、寝てばかりもいられず、起きて書斎で、届いたばかりの『四国遍路』(中公新書2014)を開いて一日過ごしています。

さて本日の本題です。震災から3年程経とうとしていたときに、震災の記憶や教訓を後世に残す事業提案の照会がありました。自由の誰でもが提案できるというので、私も提案しました。

事業名は「津波到達ライン可視化事業」です。提案した理由は、東日本大震災では、これまで経験したことないほど、津波は河を遡上して内陸部奥深くまで押し寄せ多くの犠牲者を出しています。こうした状況を後生に伝えることは、数年で苔むし埋もれてしまう石柱等での伝承では難しく、日々の生活の中に取り込んだ形で伝承する必要があると考えました。

津波到達ラインには、遊歩道を設置し、町花ツツジを植えます。そして数十メートルおきにソーラー発電を電源とする街灯を設置し、同時に夜間はレーザー光線で街灯間をつなぎ、宇宙からも確認できる津波ラインをつないで可視化するのです。こうした整備を施し、朝夕の散歩や震災の体験学習時に実態に歩いて、どれほど奥まで津波が着たのかを知ってもらう場とするのです。

遊歩道は、地域の皆さんの散歩コースにすることで、日々の手入れを自主的に行ってもらうようにします。これは、江戸時代に河川の治水事業として河川堤防に「桜」を植えたという先人の知恵を参考にしています。地元の方々は、毎年お花見ができるように、機会あることに堤防の草刈りやモグラの穴を埋めていたと言います。このようにして、日常の中に津波到達ラインを残し、後生への伝承や亡くなられた方々の鎮魂にもなるかと思うのです。場合によっては、遊歩道沿いに石仏をおいたりする方もいらっしゃるかもしれません。そんな優しさも加わったら尚更良いですね。結果はボツでした。でも、今でも私は合ったら良いなって思っています。

朱に塗られている箇所が津波浸水区域

土木学会論文集Vol.70 No.4(地震工学論文集第33集)で報告された論文「東北地方太平洋沖地震津波による南三陸町行政区別犠牲者率の影響要因」(2013.11.1受付2014.3.11受理)では、以下のように考察しています。

犠牲者率の影響要因について検討を行った結果、①浸水の深さのみならず、②1960年チリ地震津波が到達したか、③海が見えるか、④高台が近くにあるか、が犠牲者率に影響を与えているという傾向がみられた、と指摘しています。また「ここまではこないだろう、大丈夫」という思い込みをくすことが重要であると示唆された、とまとめています。

南三陸町では、内陸部での犠牲者は少なくなく、私はこうした被災実態をしっかり伝えることが大切なのではないかと思って左記の稚拙な事業提案をしたのです。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

南三陸町被災者支援でできなかったこと(南三陸町震災伝承)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    「南三陸町浸水状況地図」を見て、まず自宅の位置を確認しました。あの津波の時、高台からひと塊りになって下界の様子を見ていた私達は、最寄りの浜の方向だけに気を取られながら「ああ (津波が)来た来た」と口々に大声で叫んでいました。ところが背後の山側の方から浮き玉がガラガラと音を立てて流されて来て、次の瞬間には1キロ程離れた隣りの浜からの津波までぶつかって、目の前で恐ろしい渦を巻き始めました。

    この地図を見れば、すべての浜から上がった津波が両手を広げて町に襲いかかったことがわかります。この浸水状況を後世に伝えるための先生の提案は素晴らしかったのに没になり、実際に採用されたのはどんなものだったのでしょう。 

    大切にしたいものを後世に伝えるためには、その地域の人々がこぞって大切に思うことが鍵でしょう。例えば先生が挑まれた四国八十八ヶ寺お遍路のあの険しい遍路道。長い年月を経てもなお、お遍路道として残るためにはぽつりぽつりとでも歩く人があったから、想いを繋いでくれた先人達がいてくれたからです。

    私達も大津波に見舞われた経験と記憶を必ず後世に伝える責務があります。記録を残すこと、語り継ぐことをもっと積極的に行っていかないと。

    今私は、先日話題が出ました南三陸町への出張講座をやはり実現するべきだという思いです。みなさん是非ぜひ南三陸町にきてけらいん!

  2. 黒かりんとう より:

    そうだったのですね。
    どうかしたのだろうかと心配をしておりました。多分、1200キロの歩きお遍路のお疲れもあるのかと思います。

    コメントあまり書けませんが、やはり記事がアップされると嬉しく思います。ちゃんと読ませておりますので、あまり無理はなさらず、さざほざと頑張ってください。

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