原爆の日と原子力発電
広島の街に米軍が原爆を投下して78年となった8月6日、広島市は平和記念公園(中区)で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)が営まれました。広島市長は平和宣言で、各国の為政者に対し、「核による威嚇を直ちに停止し、信頼関係に基づく安全保障体制の構築へ一歩を」と強く求め「核抑止論からの脱却」を訴えています。
昨今のマスコミ報道からは、ウクライナを侵略しているロシアや同調する国では、核兵器使用に言及し、核を脅しに使っています。私たちは、東京電力福島第一原子力発電所事故で、原子炉に直接的な被害がなくとも大事故は発生することを知りました。電力及び水源設備にダメージが与えられただけでも、甚大な被害が引き起こされてしまうのです。
核兵器の開発は急速に進み、爆発規模が小さく、射程も短い、戦場で使用する「戦術核」とも呼ばれる兵器が現実のものとなり、核兵器使用に課していた厳しいハードルを下げてきています。
また、「核抑止論」は、冷静な判断を行う国の為政者の存在を前提とした考え方です。しかし、世界を見回したとき、冷静な為政者を前提とすることが出来るのかは、極めて懐疑的です。
8月6日と9日は、原子力に関する様々な事柄について、その背景を含めてじっくり考えてみる日にしても良いのではないかと思っています。この為に、原子力発電に関することにもわずかですが触れています。原子力との向き合い方の参考にしていただければ幸いです。
我が国のエネルギーに関する基本計画は、次のようになっています。
2050年度のカーボンニュートラル実現を目指し、「第6次エネルギー基本計画」が発表され、日本の電源構成は以下のように示されています。
2020(令和2)年度:原子力3.9%:再生エネルギー19.8%
2030(令和12)年度:原子力20%(500%up):再生エネルギー36%(182%up)
出典:自然エネルギー財団
ドイツでは、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、当時のメルケル政権が「脱原発」の方針を打ち出し、17基の原発を段階的に停止してきました。2023(令和5)年4月15日、稼働していた最後の3基の原発が送電網から切り離され「脱原発」が実現しました。
ドイツの発電に占める原子力の割合は2000年は30%で、石炭に次ぐ多さでしたが、去年、2022年には6%と大幅に減っています。これに対し、再生可能エネルギーは2000年は7%でしたが2022年には45%に拡大し、最も多くなっています。
第二次世界大戦の敗戦国で戦後奇跡の復興を成し遂げたと言われる日本とドイツとでは、戦後78年そして東日本大震災を経て、この様な違いを見せています。私たちは、この現実を直視する必要があります。
ドイツの「脱原発」の施策は、ひと言では言い表せないのですが、とにかく素晴らしいですね。初期のメルケル首相の政権の方向性を180度変えた決断、勇気がすごいなと思います。
国のリーダーの本気の本気は、官僚にも国民にも伝わり、しっかり国をあげて実行に移しました。
電力料金の上昇に国民皆が頭を痛めたことでしょう。しかしそれでも小さなことも大きなことも目標に向かって自分ができることに努力を惜しまずにエネルギー転換を粛々と進めてきた結果ですよね。
日本との大きな違いを感じます。