民生委員児童委員試論』第4講『2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと』
民生委員児童委員の主な活動(制度で規定している内容)は、民生委員法第14条では次のように規定されています(児童委員としての活動も対象舎が違うだけでほぼ同じなので割愛)。
1.住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと
2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと
3.福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供、その他の援助を行うこと
4.社会福祉事業者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること
5.福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
6.その他、住民の福祉の増進を図るための活動を行うこと
『民生委員児童委員試論』第4講では、「2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと」を取り上げます。
この項目において、全ての民生委員児童委員が行っている最も基本的な活動内容は、様々な生活課題について、地域の方々から相談を受け、必要な行政機関等を紹介したり関係すると思われる機関等につないだりすることです。民生委員児童委員自体は、あらゆる関係機関に精通していることは希なので、多くの場合、高齢者に関しては地域包括支援センター、その他については行政(泉区役所障害高齢課など)につなぎ、それぞれの専門性でニーズ分析を行い、必要な手立てを行うことになります。
民生委員児童委員に対して行政が期待する役割でも大きな位置を占める行為のように思います。
さて、この大きな役割となる活動「生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと」に対して、私はどのように対応しているかを以下に書きます。
私は、大きく三つの方法で「生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと」に対応しています。
其の一は、「予防福祉」の考え方にも通じるのです、起きてしまった生活課題に対して、相談・助言を行うというよりも、その様な状況に陥らないための日頃の些細な行為を促すような情報提供に重きを置きます。
例えば、介護予防には、「運動」が良いと言われ盛んに推奨されます。でも、なぜ運動が良いのかの記述には、言葉は少々キツいのですが「脅迫」的な表現が多いように思います。一日5000歩は歩きましょう、早歩きを加えましょう等々です。医学的知見からは、しごくまっとうな助言なのですが、これだと「楽しくない」!
私は、現在版「早起きは三文の徳」等といって、朝の散歩は運動だけではなく、朝に浴びる太陽の光によって幸せホルモン「セロトニン」分泌が促されます。更には、朝起きてから分泌され始めるセロトニンは、陽が沈むと昼間作られたセロトニンを材料にメラトニンを分泌し始めるので、快眠にも良い効果が窺知できます。この様に、朝起きの散歩は、運動効果だけではなく、心身をリラックスさせ、快眠にも良い影響をもたらすのです。これが「新三文の徳」です。こっちの方が、よりポジティブに受け止められるのではないでしょうか。
また、真夏の熱中症対策では「水分補給」が必須です。でも、お茶や珈琲も水分補給と思っている方も多々おります。この為、お茶や珈琲は利尿作用が有り、水分補給には適さないことや、塩分補給を含めた簡単な水分補給の知恵などをお知らせします。
其の二 相談に於ける「敷居を下げる」相談に来てもらえれば、ほとんどのことは何とかなります。問題は、なかなか相談に来てもらえないことです。多くの場合、相談ではなく、ことが起きてしまった後の対応です。これでは、私の手に負えません。このことを次の様に表現しています。「転んでしまってからでは私の手に負えません。なので、転ばぬ先の杖になりたいのです」と。
この敷居を低くするために、民生院児童委員新聞で、各家庭の庭や夏祭りの様子の写真を掲載したりしています。こうしたことをしていると、当の本人だけではなく、ご近所さんからも声がかかったりしていると聞きます。こんな、どうでもいいことからつながりは出てくるように思っています。
其の三 助言は、その場で専門機関に連絡して行う。助言は、「自ら持っている情報の提供」と「専門機関につなぐ」という二つの方法で対応します。自ら持っている情報の提供は、ここでは省略し「専門機関につなぐ」ケースについて書きます。
専門機関につなぐ時に注意していることは、大きく二つです。一つ目は、その場で関係機関に電話することです(もちろん当事者の了解の下で)。相談の趣旨や何を知りたいかを電話越しに相談者は聴くことが出来るので、相談内容に関する間違った理解や誤解が防げます(アドボカシーadvocacy:意見表明の支援や擁護、代弁すること)。何より、民生委員児童委員がどのような気持ちで相談者を代弁しているのかを感じてもらえ、民生委員児童委員の理解に通じます。また、相談に出向くときに備え、担当者の所属及び名前を聞き取り、「〇〇課の□□さんを訪ねて下さい」と、説明し、相談内容が直ぐに通じるように心がけます。
この様に、「相談」は、民生委員児童委員自身が解決策に乗り出すのではなく、出来るだけ生活課題の解決に関わる機関等につながりやすくするということが大切だと思っています。関係機関をお知らせするだけでは意味を持ちません。つながって初めて相談の役割を担ったことになります。更には、相談後に訪問し、相談内容は解決したのか等々、その後の経過を伺い、まだ課題が残っていないかを聞き取るようにしています。つなぎっぱなしは、相談を受けたことにはなりません。
まとめ 『2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと』の目的
・相談に応じ、助言する時に大切なことは、どこに相談すれば良いのかを考えることです。つながりさえすれば、後は何とかなります。この為、どこにつながれば相談内容に応えられるのかを知っていることが最も大切です。
・こんな例があります。担当地域の中で、ご主人を亡くされ残された方が途方に暮れていました。様々な手続きが必要だろうとは想像が付いているのですが、何をどうすれば良いのか皆目見当が付かないという相談でした。私自身も断片的な知識しかなく、到底希望には応えられそうにありません。健康保険や年金等々の停止手続きは、それぞれの窓口を渡り歩く様になります。なかなか、漏らさずに行政手続きをするのは困難を極めます。その時、何処かで目にしたことがある、役所に設置されている「お悔やみ相談窓口」です。ここを思いだし相談したしたところ、予約制だが全ての行政手続きを係員が帯同しながら行えるというもので、さっそく予約をし数週間後に役所に一緒に行きました。その様子は、とても丁寧で、係員が付きっきりで助言していました。また、窓口も最優先で待ち時間はゼロでした。このように、必要なところにつながりさえすれば、とても速やかに対応出来ます。この様に、私たち民生委員児童委員は、「どこにつなげば良いのかを知っている」このことが一番大切だと思います。
・このように、私たち民生委員児童委員は、住民の生活に関わる諸課題について、出来るだけ転ばぬ先の杖となり、そのための『掛かりつけ民生委員児童委員』となることを目指しています。
・私たちはスーパーマンではありません。「何でも知っていて、何でも対応してくれる人」ではありません。知っているのは、出来るのは、様々な生活課題を解決に導く場所(機関)です。知っているだけで十分です。それ以上、多くは必要ありません。当たらずとも遠からずでも構いません。そうしたところにしっかりつなぎ、その後をフォローすることです。
・民生委員児童委員の役割は益々重要になって行きます。現在民生委員児童委員を委嘱されている方々は、肩の力を抜いて、社会資源を上手に使って活動を推し進めて下さい。
そして、そんなに大切な仕事なら一肌脱ぐか!と思って下さる方々が一人でも多く増えることを願っています。決してスーパーマンを求めている訳ではありません。世の中では「民生委員は大変!」と流布されています。大変かも知れませんが、やり方次第では、その想いを肩肘張らなくとも十分に出来ます。是非、民生委員児童委員をやってもいよ!って、現在の民生委員児童委員や町内会長に名乗りを上げて下さい。その後は、私が責任を持って助言します。安心して手を挙げて下さい。


