保健体育 第7講『脳と運動の関係』⇒現代版『朝起きは三文の徳』(セルフケア)
冬期間になると外出の機会が減ります。この為、日常生活行為として知らず知らずのうちに歩いたり、チョットした庭仕事をしたりすることが少なくなり、どうしても運動不足になります。また、自宅内にいる時間が多くなり、日に当たる時間も減ってきます。
人間は、朝起きて明るい太陽の光を浴びると目から脳に信号が伝わり、脳内で働く神経伝達物質「セロトニン」が作られます。すると、「メラトニン」という睡眠に関係するホルモンの分泌が抑制されてスッキリ目覚めるという風に、体内時計が調整されます。ところが、太陽の光を浴びる時間が減少すると、「セロトニン」の合成が促されず、脳の活動が低下し、「メラトニン」が正常に分泌されなくなり、体内時計が狂ってしまいます。
また、このホルモン分泌は夕方の入眠にも影響を持ちます。朝起きて十分な朝日を浴び、目から光が入ることでセロトニンが分泌されます。そして13~15時間後、日中に分泌されたセロトニンを原料にメラトニンが作られます。つまり、セロトニンが少ないと、合成できるメラトニンの量も減ってしまい、うまく入眠できない可能性が出てしまうのです。朝日を浴びると、体内時計がリセットされて、目覚めが良くなるだけではなく、夜になると眠くなりうまく入眠できます。
この様に、朝起きて太陽の光を浴びることは、生活リズムを整えることにとても大きな役割を持っているのです。現代版の、朝起きは『三文の徳』といえるでしょう。
こうして、睡眠リズムが乱れ、疲れやすい、食欲が抑えられない、気力が落ち込む、といった症状が現れやすくなるという仕組みです。こうしたことが原因で、秋から冬にかけて「季節性うつ病(季節性感情障害)」という、うつ症状が現れやすいといいます。
この様に、冬期間は運動不足だけではなく、睡眠リズムの乱れ、疲れやすい、食欲が抑えられない、気力が落ち込む、といった症状が現れやすくなるといいます。こうしたことが原因で、秋から冬にかけて「季節性うつ病(季節性感情障害)」という、うつ症状が現れやすく、精神的にも変調を来しやすくなる時期でもあります。
私は、これに加えて、フレイルを心配します。フレイルは「虚弱状態」と訳されています。病気ではありませんが、加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が徐々に衰え、心身のストレスに脆弱ぜいじゃくになった状態のことです。このフレイル状態になるときの「始めの一歩」は『社会とのつながり』が希薄になることです。そのことから、生活範囲の縮小、心の不安定感等々とつながり、最終的には身体機能の低下になっていきます。このことを『フレイルドミノ』と表現されています。

東北は、冬期間が3ヶ月にも及びます。この間、内に閉じこもりで社会との関わりが希薄になると、「季節性感情障害」だけではなく、虚弱傾向(フレイルへまっしぐら)を増すことにもなります。こうしたことにも十分気持ちを巡らせ、これから訪れる寒い日々を過ごすことが大切です。少なくとも、朝起きたらカーテンを開け、ほんのわずかな時間だけでも窓を開け空気を入れ換えて、ガラス越しではなく直接目を見開いて太陽の光を浴びましょう。それだけでも胎内時計がリセットされ、生活リズムが整えられ、一日を快適に過ごすことができます。
フローレンス・ナイチンゲール((Florence Nightingale、1820年5月12日~1910年8月13日))は、その著書『看護覚え書き』で次のようにいっています。「看護とは、生命の消耗を最小限にとどめるために、あらゆる環境を整えること」といっています(『看護覚え学』15頁)。即ち、彼女にとって看護とは、患者さんが自然に治癒する力を最大限に引き出すための働きかけ、環境を整えることだったのです。
自然治癒力を促進する看護師の役割として重要視したのは、①清潔な環境:部屋の換気、清潔なシーツ、衛生管理を徹底。②適切な食事:患者さんに合わせた栄養価の高い食事を提供。③休息と安眠:静かで快適な環境を作り、十分な休息を促す。④心の安寧:患者さんの不安を取り除き、精神的な安定を保つ。です。こうしたことは、病気の時だけではなく、私たちの日常生活においてもとても重要で、こうしたことに心がけるだけでも、セルフケア能力を高めることができるように思います。
朝起きて、カーテンを開け窓を開き新鮮な空気を室内に取り込む。こうしたことの大切さは、既に100年以上も前から語られていたのです。サプリメントで体調を整えるより、遙かに安価で効果的な取り組みを生活の中に取り込まない理由はどこにもないように思います。更には、近隣の方々による「何もしない見守り」(いつもと同じだな~・・・!が分かるから、危険を察知できる)にも役立ちます。
ダメだ!脱線が長くなってしまい、本題の『脳と運動』に入り前に、皆さんがお昼休み等に読める文字数を越えてしまいました。『脳と運動』は次回に再度取り組みます。申し訳ない。

