民生委員児童委員試論 第7講『制度維持が難しくなっていく』
2025(令和7)年12月1日、民生委員児童委員が全国で一斉改選が行われました。最新のデータ(令和7年12月委嘱)を持ち合わせていないので、前回2022(令和4)年12月1日の数字で日本全体の民生委員児童委員数を見ます。委嘱された人数は225,356人(定員240,547人:充足率93.7%)。内訳は、再任は68.0%で新任は32.0%でした。
仙台市では、2025(令和7)年12月1日1,494人が委嘱されました。仙台市の人口(2025.11.1現在)1,094,909人なので、一人の民生委員児童委員が担当する人数は733人となります(平均値)。
この内、泉区では、人口(2025.12.01現在)205,945人に対して民生委員児童委員は236人委嘱されました。一人の民生委員児童委員が担当する人数は873人となります(平均値)。
また、更に地域を細分化して、私が居住する長命ヶ丘団地の例に取ると、人口7,294人(3,537世帯)に対して7人の民生委員児童委員です。長命ヶ丘団地では1,042人(505世帯)です(平均値)。
民生委員児童委員は、生活上の様々な「気がかり」に対するお手伝いを行いますので、高齢者のみを対象とする訳ではなく、あらゆる年齢、あらゆる課題に対応することを求められます。この為、概ねの対象人数は、担当地域内に居住する人口で算出して見ました。
こうした時に次のような新聞報道を見つけました。『気仙沼市民生委員充足率8割切る』というものでした(三陸新報12月2日)。記事の概要は「気仙沼市の民生委員児童委員の充足率が、8割を切った。1日に全国一斉改選され、気仙沼市では定数183人に対して144人が委嘱されたが、39人の欠員が生じた。背景には委員が高齢化などで引退する一方、担い手が見つからないという慢性的な問題があり、市は引き続き自治会の協力を得て補充に努めていく」と、いうものです。
この様な現状は、気仙沼市に限ったことではありません。多くの市町村で同様の実態があり、苦慮しています。
現在民生委員児童委員を委嘱されている方は、何らかの都合でやめたいときは、出来るだけ後任者を探して推薦してくれることを求められます。当然、義務ではありませんが、半ば慣例化しています。私自身、後任を探してもらいたいと言われたら、きっと途方のくれると思います。何らかの社会的課題を持って公的支援を必要な人を教えてもらいたいと言われたら、日常の民生委員児童委員活動から、当然のように出てくると思います。しかし、民生委員児童委員を引き受けてくれそうな人を、といわれるとそう簡単には思い浮かべないように思います。
民生委員児童委員の欠員は、高齢化だけの課題ではなく、地域に対する関心が薄れていることや社会貢献に対する意識が弱くなっている、ことが根底にあると考えています。そして何より大きな阻害要因は、民生委員児童委員活動が「とても大変な役割」という認識が流布していることです。
Hp地域福祉研究所で、毎月第二月曜日『民生委員児童委員試論』を書いているのは、「とても大変な役割」という意識を払拭したいからです。大事な役割であることには間違いありませんが、そのことが「とても大変な役割」とイコールではないと伝えたいからです。その上で、地域に対する関心や社会貢献に対する意識の希薄さにも何らかの取り組みをしていきたいのです。
これからも高齢化率は当分上昇していきます。当然、介護に関する様々な生活課題を持つ方は増えていくでしょう。しかし、それ以上増えていくのは元気な高齢者です。大まかな数字をいえば、65歳以上高齢者の20%が要介護・要支援認定者です。残りの80%は、元気な高齢者です。仕事から解放され、現役の以前と比較すると圧倒的に自由に使える時間が多くなっています。即ち『時もち高齢者』がこの自由に使える時間を、自分のする地域社会に生かしてもらいたいのです。
このことを進めていくためにも、「民生委員児童委員は大変だ!」という半分正しく半分間違っている意識を変えていきたいのです。半分正しいというのは「大変重要な役割だ」という意味です。半分間違っているのは「苦労の多い大変な役割だ」というのは、行政や他の関係機関(例えば地域包括支援センター等々)更には伝統的自治組織(町内会・自治会)との役割分担や協働のあり方を整理することで十分に軽減されます。
このhp地域福祉研究所をご覧になっている方は、是非社会貢献の一つに「民生委員児童委員」を入れてください。東日本大震災で被災者支援に関わった方々も、当時の経験を生かせます。民生委員児童委員としてその経験を生かして欲しいです。また、民生委員児童委員の他に、子どもたちを対象にする「主任児童委員」がいます。小・中学校のPTA役員の経験者は、「主任児童委員」が最適だと思っています。子どもが育ち、PTAも卒業した方々は、是非ご検討ください。皆さんの経験はとても貴重です。是非、生かして下さい。
最近、曜日感覚が少々弱くなり、今日が月曜日であることをすっかり失念していました。朝7時にポチっとクリックして下さった皆様、パソコンの故障ではありません。私のせいです。定期にアップされるはずがアップされないと心配して下さっている皆様、大丈夫、元気です。ご心配おかけしました皆様、これに懲りず、時間のあるときで結構ですからhp地域福祉研究所にお立ち寄り下さい。

