様々な学びと思い出を抱えて帰国した留学生へ

東北大学大学院社会学研究室に所属して社会学を学び、この春に祖国に戻った留学生がいます。最初にお会いしたのは社会学研究室の「集団過程観察室」。今後の研究方針(修士論文の取り組み計画)について発表会の席です。私は、担当教授に呼ばれ、彼らの研究方針等々について助言を求められたのです。この時は、まだまだ構造が漠然としており自分自身の整理が付いていない感じでした。

その後、何度か社会学研究室に足を運び、研究フィールドとして宮城県の先駆的な活動を紹介し、参与観察をして頂きました。彼女は、これ以降、大学院の授業としてだけでは無く、自主的にもその活動に参加し、参加者や活動スタッフと交流し、特に、この活動の中心的役割を担っている方々との関わりを深め、その想いや一挙手一投足に共感を覚え、その活動を修士論文のテーマとするようになりました。

彼女は、活動スタッフや参加してくる方々と親しく関わりを深めることで、研究者としての目も輝きを増していきます。修士論文の論文名にも他者との関わり(つながり)に深く共感していることを伺えます。

修士論文では、参与観察と主催者へのインタビューから、以下の特徴を見いだしています。①組織化に縛られない開かれた雰囲気②飲食を通じたつながりの構築③「恩送り」の精神の醸成④楽しみながら意味を創造する仕組み。そして「これらの特徴は、参加者がリラックスして楽しむと同時に、持続可能な活動の実現を可能にしている」と、締めくくっています。私がこれまで観てきた印象とも重なるところが有り、「楽しみながら意味を創造する仕組み」等の表現には、社会学としての考察が出来ているように感じます。

更には、活動範囲を地域の大切な社会資源に広げ、その対象となる方々に負担を掛けない運営に着目し、そうした配慮に「持続可能性」を高める要因があると分析しています。即ち、現時点だけでは無く、今後の更なる発展にも思いを寄せているのです。

彼女は、留学を終えて祖国に戻り、教育に関わる仕事に就くと聞いています。日本の大学では、社会学を学び、その過程で地域の方々と関わる機会を得て、私たちのものの考え方や他者と接する時の振る舞い、そして深くて広い優しさに触れています。こうした体験は、これから関わるであろう教育や日本の理解に少なからず影響を持ち、日本と祖国の架け橋となり、日本の文化や国民性を伝えてくれる人財として大いに期待するものです。

しかし、ここに至るまでの彼女の努力は並大抵では無く、大学院修士課程に進学する以前から学部研究生を初めとする学びを蓄積しています。修士課程に進学後も、多様な文化や人々との関わりの中で、ぶれることの無い向学心を持ち続け、私たちでさえ忘れかけている「恩送り」等の精神を読み取るまでになっています。社会学は、国民性や地域性に開きがある中で人々と社会の関わりに切り込んでいきます。留学生である彼女は、こうしたことからも非常に困難な状況を乗り越えて修士論文に取り組みんだことがよく分かります。

日本には、「結」(ゆい)という文化・習慣があります。一般には、「家業経営や家事作業における家相互の協同労働組織の一形態」(新社会学事典p1438)いわゆる、労働力の相互交換です。同時に、普段の生活中にも、この文化は生きており、何らかのお世話を頂いたら、何かの機会にお返しをすると言うものです。修論の③でふれた「恩送り」は、正に、結(ゆい)の延長線上にあるものです。お世話になったことを返したくとも遠くにいて返せない時や返したい時にはその方がいないときなどは、いただいた恩を目の前にいる必要な方に返すという考え方です。

今後、祖国で教育に携わったとき、様々な事情で生活に喘いでいたり、悩んでいたりしている方と関わりかも知れません。その時は、日本での学びや日本で関わってくれた方のことを思い出し、目の前にいる方に手を差し延べてください。きっと、日本であなたと関わってくれた方々は、よろこんでくれます。そして、それこそが関わってくれた方の望みです。これが「恩送り」です。こうして人と人との交流や優しさが広がって行き、地域社会全体の「安心安全」を築く底力(基礎体力)となり、祖国の発展に寄与することでしょう。

あなたの学びや日本の代表的な地域活動に触れ見聞きしたことは、今後生涯に渡りとても大きな財産になります。何より、地域の方々との触れあいは、あなたを一回り大きく成長させてくれることでしょう。そのことを生かし祖国のために貢献してください。いつかまた何処かでお目にかかれることを楽しみにしています。

                   2025年4月吉日 あなたの先輩になった 本間照雄(地域福祉研究所)

研究室の仲間と一緒に遊んだ子どもたち
研究フィールド
学生の憩いの場
東北大学大学院文学研究科(社会学研究室のある場所)

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