健康寿命とフレイル予防

介護を受けたり、寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間である「健康寿命」。ある、健康測定機器メーカーが行った意識調査によれば、男性85.55歳、女性89.99歳を理想的な健康寿命と考えているという結果をまとめました。

これに対して、厚生労働省調査に基づく実際の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳であり、各自が望んでいる健康寿命とは10歳以上隔たりがあります。

また、平均寿命と比べても、健康寿命との差がなかなか縮まらない現状があります。厚生労働省は2022(令和4)年7月29日に2021年分の平均寿命が記載された令和3年簡易生命表を発表しました。それによれば、「男性の平均寿命は81.47年」、「女性の平均寿命は87.57年」となり、平均寿命(2021)と健康寿命(2019)との差は、「男8.79年、女12.19年」となりました。

簡単に言えば、介護を必要としたり、寝たきり状態になって過ごす年数が、男女平均で10年以上あると言うことです。身体的(要介護状態)・精神的(認知症等)不自由な生活が10年間も続くと言うことです。

健康寿命は、3年ごとに発表されています。2019(令和元)年値は男性が72.68歳、女性は75.38歳です。平均寿命と健康寿命の開きを2001(平成13)年から2016(平成28)年の推移をみると、男性は8.67年→8.84年、女性は12.28年→12.35年と男女ともに拡大しています。即ち、要介護状態の期間が長くなっているのです。

厚生労働省

出典:Microsoft PowerPoint – 2.平均寿命と健康寿命をみる0416 (mhlw.go.jp)

寿命が長くなることは良いことだと思いますが、健康寿命がそれに追いつけない現状があります。最近、「フレイル」という言葉をよく聞くようになりました。フレイルとは、わかりやすく言えば「加齢により心身が老い衰えた状態」のことです。高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があります。しかしフレイルは、早く介入して対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性があります。

フレイルは、海外の老年医学の分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、以下のような日本語訳を付けています。

フレイルとは、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」。

高齢者が増えている現代社会において、フレイルに早く気付き、正しく介入(治療や予防)することが大切です。フレイルには、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的な変化や社会的なものも含まれます

他者との関わりの中で役割を持って楽しく過ごす、そのような暮らしの過ごし方が、最も効果的なフレイル予防になるようです。ダンベル体操よりも私はこちらをお勧めします。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

健康寿命とフレイル予防” に対して2件のコメントがあります。

  1. L.K より:

    介護予防という言葉はあまり好きではないのですが、フレイルという言葉も何回聞いても今一つ頭に入りません。
    要はいかに自分らしく歳をとっていくかが大切なのかなと思います。なにか、もっとピンとくる言葉はないかしら・・と自問していました。

    たまたま、昨日行った眼科に市が作成したポスターが貼ってありました。
    「健康長寿いきいき80 フレィㇽっちゃっていませんか?」という見出しで、フレイルとは何かということやあなたは大丈夫か?というチェック項目とともに、予防の三本柱として、①動く ②食べる ③つながるのポイントがわかりやすく載っていました。

    この①の動くは、体だけではなく、心が動くこともとても大切だと思います。
    あまり大勢でわいわいするのはちょっと苦手な私ですが、「他者との関わりの中で役割を持って楽しく過ごす」のは、大賛成です。おせっかいもされたりしたりと楽しんでいけたら幸せな人生を送れるのだろうなと思います。

    1. 鈴虫 より:

      縁あって一人暮らしの親戚のお手伝いをしています。
      様々なサービスを駆使して、本人の『自宅で暮らしたい』に応えてきましたが、今夏に体調を崩し一人暮らしに戻るにはもう少しリハビリが必要な状態です。

      『夢や希望を叶えたい』そのために自立、自律していたいというのがあればいいと思うのです。ただ漠然と不自由な生活への不安を煽るのは良くないですね。

      幾つになっても、たとえ不自由であっても、
      あなたは何をしたい?
      どんな自分でありたい?
      だれを喜ばせたい?

      そのような問いかけをしながら、本人と一緒に私も、目ざす姿を思い描くことが大事ではないかと考えています。

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