今週の一枚(震災伝承館「3.11伝承ロード」)
東日本大震災の教訓を学ぶため、震災伝承施設ネットワークを活用して、防災に関する様々な取り組みや事業を行うとして「『3.11伝承ロード』教訓がいのちを救う」という活動が行われています。
この考え方は、2019(令和元)年4月に学都仙台コンソーシアム等が緊急提言を行い、同年8月一般社団法人3.11伝承ロード推進機構が設立され、現在に至っています。震災伝承施設は、三つに分類されています。その内、東日本大震災から得られた実情と教訓を伝承する施設で、あらゆる要素(5項目)を持った施設を第3分類として現在57施設が指定されています(2022/06/30現在)。
これまで、それほど多くはないのですが、幾つかの震災伝承施設をみてきました。そこで、いつも気になることがあります。それは、地震や津波の巨大な力に関する情報や如何に「逃げたか」、「初動時の救難・救急」及び「復旧活動」等々の展示や記述が大半を占めていることです。反面、長い避難生活を如何にして克服してきたかや広域避難とその長期化によって、「ディアスポラ化」(避難先に定住してしまうこと)を余儀なくされている実態などに関する記述やデータがとても少ないのです。破壊される、命に危険が迫る、逃げる、迄ですが、その後の長いながい暮らしを支える部分が欠落している様に感じるのです。
私は、長期間の被災者支援に身を投じていたからそのように思うのかも知れません。その意味ではバイアスが掛かっているとして私の話は半分と理解してくださっても構いません。でも、東日本大震災は、「巨大化」「長期化「広域化」がこれまでのない特徴だと思っています。しかし、震災伝承館に行くと、従来と変わらない「地震・津波」の恐ろしさや被害の甚大さをとおしての教訓にだけ多くのスペースが割かれていると思うのです。
東日本大震災からの学びは、もっと違うところにあるように思うのです。被災住民が被災者支援の最前線に立ったことや長期間の避難生活・故郷を離れた避難生活を如何にして乗り越えてきたのかこそが、伝えるべきことなのではないかと思うのです。
高い確率で予測されている「南海トラフ巨大津波」では、32万3,000人が死亡し、最大で950万人の避難者がでると言われています。被害総額は東日本大震災の10倍の220兆円です。こうしたことから、長期間の広域避難生活が想定されます。
このようなことに備えるためのも、東日本大震災の教訓を従来の「防災」から「減災」の視点を移し、日本人・東北の人々の知恵や「おたがいさま」の思いを伝承する必要があるのでは無いかと思うのです。立派な伝承施設を見るたびに、そんな思いを抱いて帰ってきます。
同感です。
私も震災伝承館に行った時に、いつも何か足りないと思いながら帰って来ます。
『地震や津波の巨大な力に関する情報や如何に「逃げたか」、「初動時の救難・救急」及び「復旧活動」等々』、特に初動の命を守る行為については絶対にたくさんの人々に知っておいてもらいたいし、それらを見てどう動けばいいのかを人任せではなく自ら考える材料として欲しいので、伝承館にはそのような展示や記述が大半を占めていることは、それはそれでいいのではないかと思います。
しかし、先生が気になると言う『反面、長い避難生活を如何にして克服してきたかや広域避難とその長期化によって、「ディアスポラ化」(避難先に定住してしまうこと)を余儀なくされている実態などに関する記述やデータがとても少ない。その後の長いながい暮らしを支える部分が欠落している様に感じるのです。』と言う部分は、まったくその通りではないかと感じます。
それはなぜなのでしょうか。
初動~一次避難所~二次避難所~仮説住宅、みなし仮説住宅~復興公営住宅、自宅に残っている人、いくこさんが書かれてたように他の市町村で暮らし始めた人もたくさんいます。
初動体制や救護活動などは、ある程度情報が集めやすく、まとめやすく、こうすれば良かった、こうしたら良いという意見や考えも出しやすいように思います。
しかし、大規模に避難者が出た時に、例えば孤立させないと言う目標があったとして、仮説住宅ができるまでの間のこと、仮説住宅に入る時も申し込み順なのか、ある程度地区ごとにまとまってがいいのかとか、アパートに入りバラバラになっているときはどうしたか、復興公営住宅で重い扉になってしまったときどうすれば良かったのか等など、あまりに範囲が広くてまとめきれないというのもあるのかもしれません。
それでも、できるだけ様々なパターンの事例を集めてわかりやすくまとめ、多くの人の目で見て考えておいてもらうということは絶対に必要だと思うんです。
今後、東日本大震災よりも被害の規模が大きいとされている南海トラフ巨大津波のような災害が起きたときに、ゼロから被災者支援がスタートするのではなく、右往左往しながらもこれまでの経験を生かしていけるような伝承館の役割があってもいいと願うばかりです。
被災のその後、読みながら考えていました。
津波で全て失い移っていらしたご夫婦が近所にいらっしゃいます。公的支援を待たず自力で家を求め、庭で野菜を作り通る人に声をかけながら暮らしてこられましたが、ご主人の病気や高齢になられこのコロナ渦で外出を控えて元気を失くされているようです。
また、自分は命が助かったからと支援金を受け取らず、息子夫婦の元へ越して来たおじいさんは、タワーマンションのエレベーターが使えず外出もままならなかったと知人に聞きました。
こういう方々は公が調査した数字に含まれているのだろうかといつも疑問に思います。
自分に出来ることを考えながら暮らしていかなければと思っています。