掛け矢の音が響いた3年前

3年前の今日(2019年5月27日)は、改築した現在の家の棟上げを行った日です。あの日から3年経ちました。刻まれた木材一本いっぽんを組み上げていく様子は、日本建築のもつ長年培った技術を見ることでもあり、感心しながら眺めていたことを思い出します。

40年近く住み続けてきた住宅が、改築のためとはいえ重機で壊されるのを見たときは、思いでまでも壊され消えていくような気がして、気持ちが沈んでしまいました。住宅をつくってくれた阿部さんからは、「解体の様子は見ない方がいいです」と助言されていました。その助言は、このことなんだな~と思ったものです。でも、その時は子育てをした場所や長年苦楽を共にした場所の最後を見届け、新たな住宅に繋いで行くために、しっかり見ていようと思いました。

「思いでまでも壊され消えていく」ような感じは、基礎工事(5月11日基礎打ち)頃まで残りました。基礎が打たれ、家の形がイメージ出来るようになってくると、喪失感から期待感に変わっていったように思います。私は、基礎はとても大切だと思っているので、近くの仮住まいしていたアパートから、朝晩観に来ていました。日中は、職人さんが一生懸命仕事しているので、そのようなときに来ると「監視されている」と感じさせては申し訳ないので、職人さん達がいない時間を見計らって現場に立っていました。

工事の進み具合は、子どもと一緒で、その成長を見ているのと同じような印象を与えてくれました。家ができるまでの様子を見ることで、自分自身は何もしていないのですが、成長過程を共に歩んでいるような気持ちを持ちかったのです。できた家をポンと渡されてではなく、以前の住まいがなくなり、そしてその思いでを新た住まいに繋いで行く、そのようなことをしたかったように思います。

当日は天気に恵まれ、多くの職人さんが集まってくれました。威勢の良いかけ声や掛け矢(大きな木槌)の音が響く中、これまでの平面から一気に立体の構図3Dに変わっていきました。作業が流れるように進められ、少しも無駄もない所作は、経験の豊かさや技術の高さを感じさせてくれました。私は、前屈みになって食い入るように見ていました。図面で見ていた家が、しっかりイメージ出来るようになり、新たに出来る家に対する愛着のような感情が湧き起こる、そのような気持ちを抱いていました。

私は、昔あったような「餅まき」をしたかったのですが奥様に許可出ませんでした。南三陸町では、祝い事があるといまでも餅まきしています。それは、「みんなでお祝いする」感じがあって、いいな~とおもっていたのです。

今日5月27日にはこんな新たな生活の基盤づくりに関する大切な記念日です。様々な「記念日」を持った生活ってイイナと思っています。時としてその大切な記念日が些細な行き違いで消えてしまったりしますが、記念日を持つことは人生を豊かにしてくれそうな気がします。

サラダ記念日のような、甘酸っぱい記念日とは違いますが、私にとっては、腰が落ち着いて生活を営む基盤につながる大切な記念日です。

解体2019/03/05
基礎打ち2019/05/11
2019/05/27根太搬入
2019/05/27棟上げの祝い膳

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

掛け矢の音が響いた3年前” に対して2件のコメントがあります。

  1. 阿部 優 より:

    本間様邸3歳になりましたね。おめでとうございます!
    先日もお邪魔しましたが、だいぶ本間さんに馴染んできました。

    建物の解体は、今でも心穏やかに見れません。全く関わりもなく、通りすがりに見えてしまうのも気が引けます。解体工事は80年に1回くらいでお願いしたいものです。

    僕の建てた家は230棟以上ありますが、すべて僕の子どもです。言うなれば生みの親です。
    育ての親はお施主様です。本間さん、大切に育ててくださって本当にありがとうございます。

    これからもよろしくお願いいたします。

  2. スマイル より:

    近くに住み、家の土台ができて形になっていくのを毎日眺めることができたことは、本当にとっても幸せなことだと思います。今住んでいる我が家を建てる時は、週末しか見に来ることができませんでした。それでも、出来上がっていく過程に心躍りました。また週末ごとに通い、子どもたちが近所の方達と少しずつなじんでいく時間もとても大事だったと思っています。大工さんが近所の方達にも親切にしてくださっていたようで(近所の子どもたちにお菓子をくれたり、薪が欲しいという方に木材の切れ端を分けてくださったり)、引っ越してきてからいろんな方から感謝の言葉をいただき「なんとありがたい」と思ったことも忘れられません。

    そう、記念日のある生活いいですね。

    大切な記念日が些細な行き違いで消えてしまったことがおありなのでしょうか?もし、本当に縁のある方との記念日なら、行き違った場所に戻って向き合えば、これから先もまた新たな記念日を作ることができるのではないでしょうか・・・

    南三陸町の杉の香りのする素敵なお家で、腰を落ち着けて日々の暮らしを楽しめますよう、心からお祈りしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です