「発達障害」とは、どんな障害?

最近、様々なトラブルが起きている様子を注意深く見てみると、地域社会の中で敬遠され孤立している人の中には、大人の発達障害が認められる人がいるのではないかと思い、発達障害の基本的なことを知っておく必要があるのではないかとの認識で、このことを取り上げてみました。子どもの様子が変で、関係機関に相談に行った際に、保護者に発達障害が発見されるケースも多々あるそうです。

発達障害は、脳機能の発達が関係する障害です。発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。発達障害の原因は、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものです。もっとこのことを知り周囲の人が理解すれば、接しかたも変わってくるのではないでしょうか。

発達障害のある人を理解するために、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、主な発達障害の特徴を紹介します。なお、発達障害は、複数の障害が重なって現われることもありますし、障害の程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状の現れ方は違ってきます。

主な発達生涯の特徴

【汎用性発達障害】 コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称です。自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含みます。

①自閉症 自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障害です。最近では、自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。

②アスペルガー症候群 アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれる一つのタイプで、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、興味・関心のかたより」があります。自閉症のように、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることが分かりにくいのですが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。

注意欠陥多動性障害(AD/HD)】 注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴する発達障害です。

学習障害(LD)】 学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著しい困難を示すさまざまな状態をいいます。

【トゥレット症候群】 トゥレット症候群(TS:Tourette’s Syndrome)は、多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり続く重症なチック障害で、このような運動や発声を、本人はそうするつもりがないのに行ってしまうのが特徴です。

【吃音(症)】 吃音(Stuttering)とは、音の繰り返し、ひき伸ばし、言葉を出せずに間があいてしまうなど、一般に「どもる」と言われる話し方の障害です。幼児・児童期に出始めるタイプ(発達性吃音)がほとんどで、大半は自然に症状が消失したり軽くなったりします。しかし、青年・成人期まで持続したり、青年期から目立つようになる人や、自分の名前が言えなかったり、電話で話せなくて悩む人もいます。

発達障害の人に接するときの配慮はどうすれば良いのでしょう?発達障害があるといっても、障害の種類や程度によっても違いますし、年齢や性格などによっても、一人一人、現れかたは違います。生活の中で困難なこと、苦手なことも一人一人違います。そのため、一人一人の特徴に応じて配慮したり、支援したりしていくことが重要です。ここでは、家族や学校、職場など身近な場所で、発達障害のある人と接するかたはもちろん、それ以外のかたにも、発達障害がある人に対して配慮していただきたい基本的なポイントをいくつかご紹介します。

◇できたことをほめる/できないことを叱らない◇ 発達障害のある人は、ほかの人が簡単にできることでも、うまくできないことがあります。本人ができないことや失敗したことを責めたり、叱ったりすると、本人が「自分はだめだ」と落ち込んでしまったり、他の人や社会のせいにして批判的・攻撃的・反社会的行動傾向が強まったりしてしまいます。注意をする場合は、努力している点やうまく行っている点をほめたうえで、できなかったところは、どのようにすればもっとよくなるかを肯定的、具体的に伝えましょう。

◇視覚的な情報を提示して説明する◇発達障害の人のなかでも、自閉症などの広汎性発達障害(こうはんせい)の特性をもっている人の多くは、言葉で言われるよりも、目で見て分かる情報のほうが理解しやすいといわれています。その人が理解している言葉を使い、写真や絵などを添えて説明してあげると、理解しやすくなります。

◇説明や指示は短い文で、順を追って、具体的に◇発達障害の子供(人)はあいまいな表現を理解するのが苦手です。言葉で説明するときは、短い文で、一つずつ順を追って、具体的にすることなどを配慮しましょう。話を理解しやすくなり、見通しがもてるようになります。

◇安心できる環境を整える◇自閉症の人たちの中には、人混みや大きな音、光などの刺激を苦手とする人が多くいます。そのような刺激による不快感を大きくしないよう、安心できる環境をつくってあげましょう。

◇善悪やルールをはっきりと教える◇発達障害のある人は、暗黙の了解や社会のルールが分からないことがあります。いけないことや迷惑なことははっきり教えましょう。注意したり、叱ったりするだけでは、どうしたらよいのか分からないので、具体的にどのようにしたらよいかを教えましょう。

◇発達障害の子供(人)を温かく見守る◇子供が騒いだり、パニックを起こしたりしているとき、「なぜ親は叱らないんだ」といら立つ場合があるかもしれません。しかし、発達障害の子の中には、少しの時間待つことで無理に叱るよりも早く混乱から抜け出せることもあります。周囲の人にこうした知識があるだけで、本人も家族も楽になれます。

出典:発達障害って何だろう?(2021/12/02)厚生労働省 政府広報オンライン(2022/02/15)

発達障害とされる子どもについて、ASD(汎用性発達障害)は100人に1人程度で男子に多いとされます。またADHD(注意欠陥多動性障害)については、児童期には全体の5~10%程度という見解が一般的です。男女比としては、2対1から9対1とするものまで、さまざまですが、総じて男子の割合が多いです。この男女比の偏りについて、女子は注意欠陥の優勢なタイプが多いので、顕在化しにくいために割合が少なくなっているのではないかともいわれています。小児のADHDのうち、60~80%程度が、成人期のADHDに移行するという報告がされています。

LD(学習障害)については、2012年の文部科学省の調査によれば、学習面で著しい困難を抱える生徒は4.5%と報告されています。文部科学省が2012年に発表した調査結果によると、全国の公立小・中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、発達障害の可能性があるとされた小中学生は6.5%にのぼるとされています。この数字は、医師による診断ではなく、小中学校の教師の判断によるものですが、この結果に基づいて試算すると、何らかの発達障害の可能性のある生徒は、30人学級に約2名いるという計算になります。

通級による指導を受けている児童生徒数の推移を見てみると、この十数年の間に発達障害の子どもの数が大幅に増加していることがわかります。平成18年と令和元年の人数を比較してみると、自閉症は約6.5倍、注意欠陥多動性障害は約15倍、学習障害は約11.5倍に増えています。

発達障害とされる人が急増しているのは、日本に限ったことではありません。アメリカの疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)の調査によると、2000年から2010年までの10年間に、アメリカにおける広汎性発達障害の有病率は約2倍に増えたと報告されています。また、ADHDの有病率については、2003年から2011年の8年間で約1.5倍に増えています。

以前の日本であれば、「活発でやんちゃな子」「突拍子もないことをするわんぱくな子」などと受け止められて、とくに問題にされなかったような子も、今の日本ではおとなしくお利口に振る舞うことを求められます。おとなしくできなければADHDなのではないか、などと疑いの目を向けられてしまうのです。かつての日本には「童技(わらべわざ)」という知恵がありました。元服して大人になるまでの童の間は大人が思いもよらないようなことをするけれど、童でなくなる頃には落ち着くから放っておきなさい、というものです。このように、子どもに対して社会がおおらかだった時代に比べ、今の日本社会は発達障害の子どもにとって生きづらいのです。

発達障害の特性を備えていたとしても、社会で生きていくうえで困りごとがなければ、それは「個性」であって「障害」とはされません。発達障害とされる子どもが増えている背景には、子どもをとりまく環境の変化が深く関わっているのです。出典:幻冬舎「幻冬舎ゴールドオンライン」(2021/12/13)

「子どもをとりまく環境の変化が深く関わっている」ここには、私たちが大きく関わっています。原因者でもあり、解決策を持つ役割を担う大人でもあります。障害ではなく個性にできるような地域社会づくりをしていきたいですね。子ども達が思いっきり想像の翼を広げ、満面の笑みを浮かべながら走り回る地域社会を私たちの手で築き、それを地域の文化として確立していく。大人はそんな夢を持って地域と関わりたいものです。その方が絶対楽しい。子ども達の笑顔を見ながら暮らせるなんて、これほど楽しくて幸せなことなありません。幸せの種は、私たちの手の中にありそうです。両手で暖め、陽の光を浴びさせ、水を与え、たまには風にさらす。いつしか、自分でしっかりと根を張る様に育ってくれる。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

「発達障害」とは、どんな障害?” に対して2件のコメントがあります。

  1. LK より:

    2月19日のヤフーニュースに、なんとタイムリーな、【発達障害専門の精神科医が教える】身につけると圧倒的に生きやすくなる2つのスキルとは?と言うのが載っていました。

    以下、全文ヤフーニュースからの引用です。備忘録としてここにアップさせていただきます。

    『仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手…。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。

    本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。2021年9月に、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』が発売となった。今回は特別に本書の中から、一部内容を抜粋、編集して紹介する。

    【「自律スキル」と「ソーシャルスキル」が鍵】
    仕事の悩みには、ミスが多い、片付けができない、スケジュール管理が苦手といった実務的なこともあれば、「仕事をがんばりすぎる」「失敗を引きずってしまう」というような働き方やメンタル面での悩みもあります。 仕事は基本的には「しなければいけないこと」ですが、じつはそのなかに「しなくていいこと」がけっこうふくまれています。 仕事で「しなくていいこと」を考えるときのポイントは、自分に「できること」「できないこと」を理解して、できないことは無理せず、手放していくことです。 それが仕事全般に通じる基本姿勢になります。
    ① 自分にできることを理解して、それを通じて他者に貢献する ② 自分にできないことも理解して、周りの人の協力を得ながら対応する この2つの基本を心がけると、自分らしく、無理なく働けるようになり、仕事の悩みは減っていきます。

    私は、このスタイルを確立するためには2つのスキルが必要だと考えています。 それは、「自律スキル」と「ソーシャルスキル」です。

    <自律スキル> 自律スキルは、自分で自分をコントロールするスキルです。 自分にできること、できないことを理解して、できることには自信を持って取り組みます。そして、できないことには人の力を借ります。自分ができることを知っていて、自己肯定的だからこそ、苦手なことは苦手だと言える。できないことを人に伝えることを悪びれない。そのようなスキルを身につけると、自分の能力を仕事でしっかりと発揮できるようになります。 自律スキルを高めるには、自分の得意不得意をよく理解しておくといいでしょう。「できないことをできない」と周りに伝えること、それによって「周りから協力を得られた」「疲れにくくなった」などの成功体験を積み重ねていくことで、自己肯定感が高まります。

    <ソーシャルスキル> ソーシャルスキルは、「社会性」に関するスキルです。 「社会性」と言うと、集団のなかでうまく立ち回ることを想像するかもしれませんが、ここで言う社会性は「ルールを守れること」と「ほかの人に相談できること」です。 なんでも人に合わせるのではなく、自分らしいやり方を貫きながら、集団のルールを守る。ルールを守って活動するなかで、困ったら人に相談する。そのようなスキルを身につけると、人に振り回されて悩むことが減ります。

    【「相談相手」を探すことが、とても重要】
    自分のできること、できないことをしっかりと理解すると、生き方がスムーズになります。 「できないこと」を発見できた場合、もし自分の努力もし自分の努力でどうにもならなければ、「苦手だから手伝ってほしい」と周りの人に伝えることが重要です。 周りの人に相談できるようになると、自分の能力を客観的に理解し、適切に発揮できるようになります。自律スキルの習得にも、ソーシャルスキルの習得にも、「相談」と「合意」が重要な役割を果たすのです。 気軽に相談できる相手を見つけることが、とても重要です。 会社員の場合、上司が相談しやすい人ならいいのですが、そうでない場合には、職場で話しやすい人を探しましょう。職場に適切な人がいないなら、友人や家族など信頼できる人でもいいです。困ったときや不安になったときは、相談相手に自分の考えを話すようにしてみてください。 そうすることで、ひとつひとつの仕事について、「自分の貢献できること」と「しなくていいこと」をしっかりと理解できるようになります。

    (本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)
    本田秀夫(ほんだ・ひでお) 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長 特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表

  2. H.Y より:

    子どもの様子が変で、関係機関に相談に行った際に、保護者に発達障害が発見されるケースも多々あり,また,小児のADHDのうち、60~80%程度が、成人期のADHDに移行するという報告がされているとのこと,そうなんですか~。
    大人のかたで,なんだかソワソワ多動だったり,そこで口挟む?とイラっとさせされたり,あれ,また忘れちゃった?みたいなケアレスミスをすることが多い人に出会うことがあります。もしかしたら、脳機能の発達が関係する障害をお持ちかもしれないということですね。
    『子どもに対して社会がおおらかだった時代に比べ、今の日本社会は発達障害の子どもにとって生きづらいのです。』きっと子供だけでなく,発達障害を持った大人はもっと生きづらさを感じながら生活をなさっているのかもしれません。
    それがちゃんと診断されていることが大切なのか,もしかしたらそういう障害を抱えているのかもしれないと思うようにして接するのがいいのか,ちょっと難しいところもありますが,確かに,もっとこのことを知り周囲の人が理解すれば、接しかたも変わってくるのかもしれません。

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