今朝の朝ドラ「なぜ、土地を離れないのか」
今朝の(8月19日)NHK朝ドラ「おかえりモネ」第69話で語られていたこと。
何度も大雨により土砂崩れが起き、そのたびに大きな被害を受けている。それでも、集落の人々はその土地を離れようとしない。
生命の危険にさらされながらもそこを離れない、なぜなんだとお天気キャスターの朝岡(西島秀俊)が過去の苦い経験を思い出しながら苦悶する。
たまたまモネの祖父が牡蠣の養殖で賞をもらい、その付き添いできていた父親耕治(内野聖陽)との会話に中で、理解の糸口を見つける。「土地というより、人なのかも知れない、顔見知りや見たことのないここに住んでいた人々、そんな人との関わりがそこにはある」(だいたいこんな感じ)と語っているのです。
私は、このやりとりを観ていて、ハンプトンが言った「居住地に対する愛着は、居住期間とともに強まるが、同時にその愛着はその人を取り巻く物質的環境との関係よりも、他の人々との個人的な相互関係の方に関わっている(Hampton,1970,p115)」を思い浮かべました。
その土地を離れないという選択は、その土地の持つ自然環境や社会資源に対する愛着は勿論ですが、関わる「人」との関係に大きな要因があると言っています。今回の朝ドラでも全く同じことを父耕治が語っていたのです。
東日本大震災では、津波で長年住んでいた地域を離れなければならない人々が沢山いました。防災集団移転や区画整理事業で、新たに造成された計算しくされ瀟洒(しょうしゃ)な(あかぬけししゃれた)街に住宅を構えました。長年住み慣れた場所で培った他者との関わりはシャッフルされ、一から築いていかなければなりません。さぞかし、気持ちの落ち着かない、ややもすると孤立してしまいそうな中での暮らしにため息をつく日々でしょう。特に、長年住んでいた高齢者のダメージは想像を超えます。
コミュニティは一朝一夕にはできません。被災地では、今、このことを一生懸命やっている最中です。
震災から10年、街はきれいに整えられ、高級マンションと見間違う災害公営住宅で新たな生活をしています。でも、今日の朝ドラにあったように、厳しい環境なのにあえて戻る選択をした人々。一方、それを許されず長年住み続けた地域を離れなければならない人々がいます。こうした戻れない彼らの気持ちにどうすれば寄り添えるのか。これからの課題です。