山本潤子の『卒業写真』を聴いて
6月の下旬、車から聞こえてきた『卒業写真』(歌:山本潤子(元赤い鳥メンバー))に鳥肌が立ちました。この楽曲は、1975(昭和50)年の作品で、作詞・作曲は荒井由実です。私が東北学院大学に通っていた25歳の時に発表されました。
当時のことを思い浮かべてみると、この頃に最も印象にあるのは、社会福祉に関心を持っていたことも有り、岡林信康の『山谷ブルース』でした。『卒業写真』については、そんなものかな~っていう程度で、歌詞に共感したりすることはないままに、ただ透明感のある歌声に惹かれているだけのように思います。1969(昭和44)第3回「ヤマハ・ライト・ミュージックコンテスト」全国大会で「竹田の子守唄」を歌いグランプリを獲得した「赤い鳥」のイメージを重ね合わせて聴いていたからなのかも知れません。ただ、何となく気になる心に残る曲でした。
それ以降、特にこの曲を選んで聴くと言うこともなく時が過ぎました。
それが突然、小田和正とのセッションの中で聞こえてきたのです。小田和正と「ヤマハ・ライト・ミュージックコンテスト」の時(赤い鳥の時代)の話で盛り上がっていた山本潤子という名前と『卒業写真』は結びつきませんでした。それが、イントロが流れた瞬間、身体の方が先に反応し鳥肌が立ったのです。「あ!」って前のめりになってしまいました。そして「あなたは私の青春そのもの」という歌詞の所で、不覚にも涙が出てしまいました。
当時のことを思い出してというのではなく、今になって「あなたは私の青春そのもの」という歌詞が心に響いたのです。当時のことを思い出しても青春という言葉を思い出させるようなことは思い浮かびません。でも、今は「あなたは私の青春そのもの」という歌詞に強い憧れや願いを感じるのです。
青春という言葉の持つ響きを感じることのないまま、知らない土地で仕事のことだけ考えていた私にとっての青年期は、遠い時の中に置き忘れ過ぎてきたように思います。
若いときの「青春」とは違う、サムエル・ウルマンの「青春」や高村光太郎の「私は青年が好きだ」にあるような青春や青年をこの年で感じられるような生き方をしたいものです。そして、この様な青春に共感する大切な人と人生を共に歩みたいと願っています。
青 春
サミュエル・ウルマン(訳詞:岡田義夫)
青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く「驚異への愛慕心」空にひらめく星晨、その輝きにも似たる事物や思想の対する欽迎、事に處する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く疑惑と共に老ゆる
人は自信と共に若く恐怖と共に老ゆる
希望ある限り若く失望と共に老い朽ちる
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力と霊感を受ける限り、人の若さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至ればこの時にこそ人は全くに老いて神の憐れみを乞う他はなくなる。