東京電力福島第一原子力発電所事故に関する書籍
TOKYO 2020 で日本の選手を応援するもの良いのですが、もうすぐ忘れてはいけない広島・長崎原爆投下の日を迎えます。東日本大震災では、岩手、宮城、福島県を中心とした太平洋沿岸部を巨大な津波が襲い、東京電力福島第一原子力発電所事故を引き起こしています。
私たちは、津波被害に目を向けがちですが、被災当時の時を思い出すと、福島県から避難してきた人が仙南の市町に駆け込み、その時、線量計の調達に右往左往したりしていました。また、事故により大量の放射性物質が大気中に放出しました。放出された放射性物質は、福島県だけでなく、宮城県、関東1都6県、静岡県などの広い範囲で、土壌、水道水、農産物、畜産物、上下水道汚泥など様々な環境汚染を引き起こしています(国立研究開発法人「国立環境研究所」)。
汚染レベルに違いはあるものの、汚染稲わらや牧草などの農林業系放射性廃棄物処理をめぐる問題は,本県においても深刻な課題として、仙南・仙北の地域社会に残されている現在進行形の問題でもあります。加美町は、指定廃棄物最終処分場候補地選定に関して、町長が身体を張って阻止したことは記憶に新しいところです。
この様に、原発事故は決して福島県だけの問題なのではありません。こうした、認識でいるので、原爆投下の日を前にして、東京電力福島第一原子力発電所事故に関わる2冊の本を読んでいました。1冊目は、映画「Fukushima50」の原作になった、門田隆将,2012『死の淵を見た男-吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』PHP.。2冊目は、原発事故当時、直接現場で指揮を執った行政職員のインタビューを下にした、今井照/自治総研編,2021『原発事故 自治体からの証言』ちくま新書.です。
『死の淵を見た男』では、息が詰まるほど緊迫した当時の様子が再現されています。私が最も驚き背筋が凍り付くように感じたか所は、259頁に書かれている部分でした。当時、内閣府原子力委員会委員長の試算では、避難対象地域は250㎞、人口5千万人です(日本の人口の約半数です)。これは青森を除いた東北全域と関東全部と新潟県までが対象地域です。当然宮城県も入っています。こうした事実はほとんど知られていません。正確には知らせていない、もっというと隠していたのではないかと考えてします。
この試算は、奇跡的な偶然で回避されました。一号機や三号機の爆発で、ボルトが緩み二号機の格納容器の圧力が低下したのです。紙一重の偶然で、私たちは原発事故避難者にならないで済んだのです。このような事実を知ると、原発事故は決して福島だけの問題なのでは無いことがわかります。私たちは、もっと原発事故について関心を持つ必要があるように思います。
一方、2冊目の『原発事故自治体からの証言』では、当時の被災自治体の混乱した状況がわかります。詳しい情報が無いままに彷徨する(さまよう)様子が語られています。国、市町村及び住民の関係がズタズタのまま彷徨を強いられています。情報の共有や公開(説明)の重要性が改めて問われています。多くの場合、「無用な混乱を避ける」という名の下に情報が伝えられていません。緊急事態で仕方がない状況下にあったことを割り引いたとしても、見直すべきことの多い対応のよう感じます。
原子力発電所の賛成・反対を問うているのではありません。私たちの生活は、こうしたリスクと常に隣り合わせの中で暮らしているのです。こうした中においては、正確な情報を下にして、しっかりと議論する必要があると言いたいのです(リスクコミュニケーション)。こうしたことは、原発事故に限ったことではありません。日常の些細な事柄についても言えることです。私たちは、もっと自分事として社会の有り様をみんなで考えていく必要があると思います。