海と暮らす人々の天気をよむ力
NHKの朝ドラ「おかえりモネ」で漁師をしている方が、風や雲の動きから天気をよんでいるシーンが幾度となく出てきます。それを見ながら、記憶の片隅に認知症ケア学会で、元漁師が天気を言い当てることに着目して、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)の軽減に役立てているケア実践に関する研究発表があったことを思い出し、認知症ケア学会誌の記録を探していました。今日、ようやく見つけました。2013(平成25)年6月の認知症ケア学会の発表でした。『地域資源と生活習慣を活かした支援― 海の男の風を読む力に着目して ―』と題する研究発表でした。
なんと、南三陸町の介護施設の方の発表で、研究目的に、「震災による混乱と不安による身体的・精神的・社会的機能に低下傾向のある高齢者対して、自己の持つ経験や周辺環境の持つ安定感を活用した社会性の拡大と家族との関わりの再構築による父/祖父としての役割獲得をとおして、認知症状の緩和と生活の質の向上を図る」とありました。研究内容は、別添の配付資料をご覧下さい。
震災後、沿岸部では、環境の激変などを切っ掛けに、介護が必要な高齢者の混乱によるレベル低下が報告されています。そうした中にあって、この研究では、当事者の持っている能力を生かし、役割づくりや家族関係の改善につなげています。特別なことではなく、その方が持っているものに着目し、それを見えるようにしているところに感心し、記憶に残っていたのでしょう。
ケアのチャンスは、身近な所にあります。それに着目できるかどうかはケアワーカーの能力にかかってきます。常にケアの対象者である高齢者を、様々な関わりに中で暮らしてきた「生活者」として改めて見てみると、その方を主役にしたケアの仕方は様々見いだすことができます。サブタイトル「-海の男の風を読む力に着目して-」は、まさにそのことを如実に現しています。
地域福祉の分野でも同じようなことが言えます。地元にある資源を活かすことで、私たちの社会は、比類無い豊かな社会であることを知る事ができます。過去の歴史を紐解き、今に繋いでみると、そこには壮大な歴史ドラマが浮かび上がり、先人の知恵が浮かび上がってきます。背伸びしたり、無い物ねだりをするのではなく、今あるものにもう一度光をあて使い切る知恵を持ちたいものです。こんな姿勢で周りを見渡すと、地域は宝の山に見えてきます!