縮小ニッポンの衝撃 其の四
【住民自治組織に委ねた地域の未来(島根県)】
島根県は、「過疎化が進んだ県」「全国で二番目に人口が少ない(最も少ないのは鳥取県)」等、人口減少にまつわる説明に、いつも取り上げられる「縮小ニッポンの未来図」です。島根県では、国土交通省が試算した2050年の人口シミュレーションによると、島根県内で2010(平成22)年時点で、人が住んでいるエリアの77%で人口が半数以下になり、そのうちの29%は人が住まない「無居住化地区」になると予測されています。
島根県の高齢化率は32.5%。日本の現在(2016年国勢調査)の高齢化率は26.6%で、20年後には33.4%になると推計されています。つまり、島根県は20年後の日本の姿をある意味先取りしている。縮小が進む日本の将来像が島根県に見て取れるのです。島根県の人口データを分析すると、人口減少の原因にある“変化”が起きていることが分かりました。人口減少は、二つの要因に分けられます。一つは「社会減」で県外への流出は県内への流入を超えている人口減少。もう一つは、「自然減」で、亡くなる人の数が生まれる人の数を超えている人口減少。島根県は、これまで社会減が人口減少の主な原因でした。しかし、1992(平成4)年からは自然減が始まり、減少の割合が年々増加してきました。2008(平成20)年以降は、社会減より自然減による人口減少が多い値を示すようになった。根本的な人口減少が始まったのです。
人口減少は、税収減少に繋がることが避けられない。「これまでのような行政主導、行政主体の行政運営が限界を迎える」「生産年齢人口の減少によって、税収が減少する一方、老年人口の増加に伴う社会保障費などの扶助費が増大する。次代の担い手となるべき年少人口が少なくなっていくことで、今後この流れは更に加速する」等々の声が現場の行政職員から挙がっています。特に、公共交通や医療機関などについては、現状のサービスを維持することは難しく、その対応が急務であると語っているのです。
【オンデマンド交通(島根県飯南町谷地区)】
こうした状況下で多くの自治体が示しているのが「住民との協働」です。「自分たちでできることは自分たちで」の基本姿勢で、行政だけは担いきれないサービスを補ってもらおうという考えです。
公共交通機関が人口減少で撤退した後を引き継いで行われる「オンデマンド交通」はその典型です。島根県内陸部に位置する飯南町谷地区では、高齢化率45%で多くの高齢者が山間に点在する典型的な過疎地域です。この地区のオンデマンド交通は、町からの提案で、町が車両を提供し、運転や運行スケジュールの管理などはすべて住民が行っています。利用者は、一回の利用で燃料代に当たる200円を支払う。「見て見ぬふりをしたら、そのしわ寄せは弱いところにくる。自分たちで担えば、住民目線でよりきめ細かなサービスができる。負担して分け合って、協力してやっていく時代じゃないですかね、今は。幸いここは昔から“助け合いの精神”が培われている地域だから」。助け合いの精神を合い言葉に、これまで私たちがあたりまえと思っていた身の回りのサービスが、じわじわと住民の手に委ねられる時代がそこまで来ているのです。
宮城県でも、仙台市生出地区等で実践されている様子が、だいぶ前になりますが新聞で報道されていました。オンデマンド交通は、人口減少地域の足の確保ということで初期段階で良く取り得組まれています。また、災害公営住宅を中心に、カーシェアリング等も足の確保として実践されています。カーシェアは、既存制度との関係で制度すれすれの所で運用されており、なかなか難しい現状があります。地域で自立した生活を営むためには、住民の足の確保は必須です。公共交通機関が縮小されていく現状の課題はとても大きく、こういった現状を行政が補完しているのですが、それが難しいとなると、我々の「住み慣れた地域で暮らし続けたい」という想いは、どの様にすれば実現できるのだろうか。一人ひとり自分ごととして考えてみる必要があります。