縮小ニッポンの衝撃 其の三
【東京23区なのに消滅の危機(東京都豊島区)】
東京都は、2025年に人口のピークを迎えたのち減少に転じると予測しています。今回、消滅可能性都市と名指しされた豊島区は、毎年2万人もの転入があり、2,000人から6,000人の社会増があります。しかし、25年以上にわたって「自然減」が続いていました。なので、他の自治体からの流入がなければ、とうの昔から人口減少が始まっていたのです。自然減に陥っている大きな要因は出生率の低さで、全国平均1.45(2015年)を大きく下回る1.00で東京23区でも最下位でした。
また、転入者は、20代の単身世帯が6割を占めています。20代単身者が結婚して区内で子どもをもうけてくれれば自然増に転じるのですが、現実はそのように簡単にはいかない現実もありました。20代単身世帯の平均年収が241万円なのです。この年収では、結婚して子どもを産み育てることは困難なのではないかと考えられます。また、この年収から、非正規雇用に従事する人が多いことも予想され、将来的にも給与水準が上がらない可能性があり、租税負担能力も自ずと低いことが想像されるのです。
地方から流入してきた単身者の中には、経済的に困窮し十分な蓄えのない人もいます。こういった人達は、高齢になって病気になれば、家計はたちまち行き詰まり、必然的に生活保護や医療。介護などの社会保障制度に頼らざるを得なくなる。これまで、区の財政を支えてきた若い世代が、一転、将来の区の財政負担になっていく可能性があるのです。
私たちが住む市町村でも、単純な人口の増減に一喜一憂するのではなく、増減の内訳をしっかり見る必要があります。社会増が大きな企業に依存しての結果では、景気の動向に大きく左右されたり、城下町化の懸念があります。また、自然増減は、地域社会の基本的な安全安心を担保する環境に大きく左右されます。子どもの数が減っている時は、もう一度足下をしっかり見る必要があります。
人口の増減は、様々な社会現象・地域の姿を反映します。何人増えた、減ったを見るのではなく、それに至った理由に目を考えてみることが大切です。社会的想像力です。考えられる理由を色々と思い浮かべ、自分なりの対策を考えてみることです。きっと、気づくことが多々あると思います。
人口減少は、田舎の話と思っていましたが、今回のことで、たとえ大都市であっても起きることを知りました。私たちの宮城県でも、現在、社会増で人口が増えている、人口構造が若い自治体もあります。そのような自治体は、今のうちから(若干余裕の有るうちから)将来の人口減少や人口構造の高齢化に備えた投資(地域社会づくり)に心がける必要があります。特に、子どもを産み育てる環境づくりに地域上げて取り組む地道な地域づくりが、将来の安心安全を築く柱になると思います。