出羽三山丑歳御縁年に羽黒山「三神合祭殿」を参拝

昨年あたりから、出羽三山は今年(令和3年)が12年に一度の大変御利益がある歳に当たると聞いていました。四国八十八ヶ所巡礼を終えた勢いで、季節の良いときにと思い行ってきました。出羽三山は、日本三霊場の一つで、西の伊勢詣でに対して東の奥詣でと称されてきたとのことです。伊勢詣ではよく聞くのですが、出羽三山が東の奥詣で称され、日本三霊場の一つとは全く知らず、山伏の修験の場として良く見聞きする程度でした。

日本三大霊場であることを今に現すものに、鶴岡市羽黒町手向(とうげ)地区にある宿坊の多さがあります。登り口に向かう途中に、道の両側に宿坊が軒を連ねていました。神社なのになぜ宿坊と疑問に思ったのですが、明治時代までは神仏習合の権現を祀る修験道の山でしたが、明治以降は神山になったとのことでした。古くから、修験道(山へ籠もって厳しい修行を行うことで悟りを得ることを目的とする日本古来の山岳信仰で、仏教に取り入れられた日本独特の宗教でもあります。修験道の実践者を修験者または山伏という)の山として信仰され、日本屈指の霊場として知られてきました。このような歴史があり、宿坊も栄えたのでしょう。

出羽三山は、山形県の中央にそびえる羽黒山(414m)・月山(1,984m)・湯殿山(1,504m)の総称で、約1400年前に開山したと言われています。羽黒山は現世の幸せを祈る山(現在)、月山は死後の安楽と往生を祈る山(過去)、湯殿山は生まれかわりを祈る山(未来)とされ、出羽三山への参拝は、江戸時代には庶民の間で、現在・過去・未来を巡る「生まれかわりの旅」として広がったといいます。

2021(令和3)年は、12年に一度の出羽三山「丑歳御縁年」に当たります。約1,400年前、第32代崇峻天皇の皇子である蜂子皇子が三本足の霊烏に導かれ、修行の後に羽黒山、続いて月山、最後に湯殿山を開きました。この日が丑歳丑日であったことから、丑歳を三山の縁年とし、丑歳には三山の神様の力が最も高まるとされ、この歳にお参りをすると12年分のご利益を得られると伝えられています。軽薄な私は、この12年分の御利益を得ようと山に登ったのです。

服装は、四国八十八ヶ所お遍路の時の白装束とは違い、山登りの服装で石段に挑みました。両手には、金剛杖の代わりにのノルディックウオーク用のポールを持ちました。リックには、雨具の他にポカリと行動食にお気に入りのレーズン入りのクッキーを持ちました。ズボンは、ストレッチのある山登り用で、上着は速乾性のスポーツシャツ。靴は、長距離のウオーキングに耐えられ、雨にも備えたゴアテックス製にしました。日帰りの山行には、耐えられる程度の装備で臨みました。気分は、神社奉拝ではなくどこから見ても山登りです。私だけではなく、行き交う人たちも殆どが、山登りの服装でした。それほどきつい羽黒山詣でなのでしょう。十分でなかったのは私の体力だけです。

熊野三山と並び称される修験道の聖地・羽黒山は、ミシュランで三つ星を獲得した杉並木があります(この地に立つまでは知りませんでした)。全長1.7㎞の石段の両側に、樹齢350年から500年を超える杉並木が続きます。その数は500本以上で、国の天然記念物に指定されています。長く連なる石段と両側の杉並木は圧巻です。石段を踏み始めて程なくの場所に、国宝に指定(1966年)された東北地方では最古といわれる(600年前に再建)五重塔があります。色彩を殆どなくして森の中に佇む姿は、落ち着きと歴史を感じさせてくれます。二の坂にある力持ちやお茶が飲める場所まで来ると下界の機械的な人工の音は聞こえなくなり、自分自身が発する息づかいや心臓の鼓動が葉を揺らしながら吹き抜ける風音と一緒に、森の中に響いていきます。歩いてもあるいても石段が天に続き、森の中の巨木の間を歩いているアリのような感覚になります。

2446段の石段を登り終えたところに、出羽三山神社三神合祭殿があります。1818(文政元)年(江戸時代後半)に再建されたもので、月山、羽黒山及び湯殿山の三神が合祀されている、茅葺きの大屋根が見事な神社本殿(国指定重要文化財)です。ここで、過去、現在及び未来に対する感謝やお願いをして御朱印を頂きました。この御朱印は、三神社をお参りしたことになり、加えて丑歳御縁年の記載もある平年よりも特に功徳があり霊験もあらたかな御朱印です。有り難く頂いてきました。返りは、足がつりそうだったのでバスで降りてきました。少し、功徳が弱まったかもです(汗)。

出羽三山詣では、前述したように羽黒山が現世、月山が前世、湯殿山が来世を表すとされ、羽黒修験道では、死と再生の意味を持つ「山関三度の行」といわれています。生きていながら新しい魂として生まれかわれるという信仰は、現在・過去・未来をめぐる、「三関三渡の旅」とされ、江戸時代に庶民の間に広がったといいます。日々の生活を送りながら、精進を重ね、新たな自分になれるよう努力する。私の解釈ではそうなります。今日の拝礼の機会を生かし、より人様の役に立てるよう「生まれかわり」を意識して日々精進を重ねたいものです。

《参考》

羽黒山は、出羽三山の中で最も村里に近い、人々の現世利益を叶える山であったことから「現在の世を表す山」といわれています。樹齢300年を超える杉並木に包まれた2446段の石段は、ミシュラン・グリーンガイド3つ星認定されています。山頂には羽黒山、月山、湯殿山の神様を祀る「三神合祭殿」があり、月山・湯殿山への参拝ができない冬季も三山のご利益を受けることができます。

月山は、日本百名山のひとつで、標高1984m。山形県のほぼ真ん中にそびえ立っています。秀麗で神々しい姿から、先祖の霊たちが鎮まる山、過去の世を表す山と言われています。ブナの原生林や珍しい動植物など美しい大自然が残っています。

湯殿山は、標高1,500m。月山に連なり、湯殿山神社はその中腹の渓流のほとりに鎮座しています。山中で修行を行う山伏が生まれかわりを果たす聖地とされ、今も山伏が修行をする行場です。山頂にある湯殿山神社は「語るなかれ」「聞くなかれ」といわれ、本宮は撮影禁止、裸足で参拝する神秘的な場所です。

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