出生数80万人割れに思うこと
2022(令和4)年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は前年比5.1%減の79万9728人で、統計開始以来、初の80万人割れとなったことが、1月28日、厚生労働省の人口動態統計(速報値)で発表されました。外国人を除いた「概数」は77万人前後になる見通し。国が2017(29)年に公表した推計では、速報値の80万人割れを2033年と見込んでいたので、10年超速いペースで少子化が進んでいます。
公益財団法人1more Baby応援団(所在地:東京都港区、理事長:吉村泰典)は、日本から少子化問題をなくしたいという想いのもと、このたび、「夫婦の出産意識調査2022」を実施しています。この調査は2013年から調査を開始し、今年で10年目となります(既婚者2,955と40代で出産を経験した女性409名が対象)。以下、本調査を引用編集。
調査結果、「今後出産する/したいと思う」の数値は昨年度から減少傾向にあり、2022年度は過去最低値となった。また、「今後出産をしないと思う」理由は「経済的不安」が最も多く、新型コロナウイルス感染拡大などによる不安定な社会情勢の影響がみられる。一方、子どもがいない既婚女性では、妊娠・出産・育児における心理的な不安が高い傾向を示し「心理的な不安」が最も多く、62.1%となっています。
また、別の視点での調査項目「2人以上の子どもを出産した方の幸福度」は、過去10年を通して高い傾向を示し、「2人以上の子どもを出産して満足」(95.7%)しており、その理由として「家庭や子どもへの好影響」を挙げています。2人以上の子どもを出産した方の幸福度は、2013年以降90%後半を推移しており、本年度も95.7%と高い数値となった。その理由は、「にぎやかになった」「子ども同士で遊べるようになった/成長した」など、家庭への好影響である傾向がみられた。
一方、「子どもがいない」家庭では「自分は親として十分ではない」と思っている方が多く、
「子どもがいない家庭」は各項目において子どもがいる家庭よりも数値が低く、特に「親としての責任・覚悟」は子どもがいる家庭よりも15.0%以上低いことがわかっています。(ここまでが引用を基にした整理)
この様な状況に対して、国は「異次元少子化対策」と銘打ち、少子化対策の柱に①児童手当など経済的支援の強化、②学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充、③働き方改革の推進、等の検討が行われるようです。同様にして、子育て支援として、現金給付案を決める自治体が全国で相次いでいます。東京都は新年度から、出生率の向上を目的に、全ての18歳以下の子どもに月5千円を給付する方針です。こうした手当の増額や対象年齢の引き上げは、特に選挙近くなると声高に言われることが多いように感じています。私は、こうした基本的な施策が、選挙の道具(人気取り)にされている感じがして快く感じていません。
こうした国民の基本的なニーズは、国の舵取りをする政治の判断で「手当」として行われるのではなく、基本的な必須費用として無償化などで行われる必要がるのではないかと思います。以前、取り上げた「ベーシックインカム」転じて「ベーシックサービス」です(井出英策,2021『ベーシックサービスという革命』小学館.)。
それと、お金をもらえれば、人は「子どもを持とう」と思うのでしょうか。子ども「二人目の壁」として、今後出産をしないと思う理由は「経済的不安」と統計上の数字があります。経済的不安は、どこから生じるのでしょうか。確かに育児にお金が掛かる、小児医療費も大変、良い学校に入れるには塾も必要だし大学まで多額の学費が必要等々、お金の不安は尽きません。
でも、もう少し掘り下げて見ると、良い学校に入り良い企業に就職することが、子どもの幸せだと感じているから「教育費」に関心がある。しかし、その子の個性と能力にあった生き方が出来れば幸せだ、と考えられると、選択肢はもう少し違ったものになるのかも知れません。子育てについての不安についても同様に、親が頭を悩ましているのは「医療費」だけでしょうか。
「周りの人と上手くやっていけているのだろうか」とか「いじめたりいじめられたりしていないだろうか」等々、医療費や育児費用とは違ったところで悩むことが実は多いのではないでしょうか。誤解を恐れずに言えば、お金では解決できないところで悩むことがとても多いように思うのです。
こうしたことから、私は様々な手当の増額という、物事をお金の力だけで解決しようとする施策に根本的な無理があるように思うのです。また、この様な形での施策だけを進めると、お金だけで物事を解決しようとする風潮を助長することになるのではないかと思うのです。
様々な地域での支え合いや「おせっかい」があることで、経済的には苦しいけど周りの人が気に掛けてくれているから安心だ!こんな「お金では買えない」大切な地域資源で包んであげることが出来たら、「経済的不安」はもう少し軽くなるのではないでしょうか。
みなさんが行っている、地域の支え合いや「おせっかい」は、こうした視点で見直してみると、実は地域の力によるセーフティーネット形成や少子化対策にもつうじる、とても大切な振る舞いだと思うのです。生活の基本的な部分を維持するためには、お金が必要なので、「お金の問題ではない」等と言うつもりはありません。しかし、お金に換えられない「人と人との関わりの力」にも、もう少し気を配り、ともに住みよい地域社会を築いていくことに関心を持っても良いのではないかと思うし、その可能性を私は信じているのです。
「「子どもがいない」家庭では「自分は親として十分ではない」と思っている方が多く
「親としての責任・覚悟」は子どもがいる家庭よりも15.0%以上低い」
とありますが、子供がいない人にこの質問の仕方をすればそれは点数は低くなりますよね。なんかインチキくさい統計…
出生率が増えている先進国では婚外子の数が半数近くになりますが、日本も婚外子に対する偏見を無くしたり、福祉を良くしたりなどすればもっと出世率が上がるのではないでしょうか。
そもそも日本の「ママ友」なんてマウントの取り合いなイメージがあるのでめんどくさくて何年もそんなのに付き合わなきゃいけないと思うと子供欲しくてもやっぱり無理ってなりますね。独身女性より。