今週の一枚(南三陸町311メモリアル)
東北学院大学と気仙沼市が協働で行っている「アクティブコミュニティー塾」の帰りに、南三陸町が東日本大震災からの復興の集大成と位置づける道の駅「さんさん南三陸」に併設されている「南三陸311メモリアル」(2022年10月1日オープン)に立ち寄りました。
この震災伝承館「南三陸311メモリアル」は、東日本大震災時に被災者支援の担当課である保健福祉課の課長補佐として最前線を指揮していた方が、震災伝承館整備の準備室長として関わり、開所までの一切を取り仕切り10月1日のオープンに漕ぎ着けています。
南三陸311メモリアルは、日本建築界の第一人者である隈研吾氏の設計やフランスの世界的現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski、1944〜2021)の作品を展示するなど、多くの話題を持った施設です。ボルタンスキーは日本の芸術祭にも多く参加しています。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」では「最後の教室(2006年、2009年)」「森の精(2022年)」を。瀬戸内国際芸術祭では「心臓音のアーカイブ(2010年)」「ささやきの森(2016年)」を発表し、これらの作品は現在も常設展示されています。こうした各界を代表するような方々が関わった施設を整備するには、大変なご苦労があったことと拝察しています。
また、既存の震災伝承館や東日本大震災で新たに整備された伝承館とは、一線を画すコンセプトで整備している事から、多くの困難があったことと思います。震災時の様子を示す展示などは一切なく、「ラーニングプログラム」をその中心に据えています。私もこのラーニングプログラムに参加し、隣り合う人と意見交換などをして「自分事として考える」機会にするという意図を体感して来ました。
プログラムの映像には、麻生川前戸倉小学校長や結の里の高橋さん等々、面識のある方や見覚えのある場所が一杯記録されていました。映像の中は、私が南三陸町に行く前の20日間の出来事が中心で、その後の長い避難生活や広域避難等々には触れることはなく、「逃げる」「命を守る」その為にどの様に振る舞うのかを問うプログラムです。これだけを中心にする伝承館は、確かに他には無いように思います。
地道に問い続けることで、南三陸町だからできる震災伝承を築いてもらいたいと切に願っています。
「逃げる」「命を守る」その為にどの様に振る舞うのかを問うプログラム。
確かに大規模災害の時には、まずもって命を守る行動をとることが最重要なことだと思います。津波は、想定外なことも起きうることも踏まえ、できれば小さい頃からの学校教育と共に家庭の中での「てんでんこ」のような約束事を決めておくことがとても大切なことなのでしょう。
そして、逃げると同じくらい大切なこととして、やっと助かった命を災害関連死‥で亡くしてはならないと言うことと、さらに、長引く避難生活を送らなければならない人たちには何が必要なのか、どのように支援していくのがいいのかなどについても考えていく必要があるのではないかと思うのです。これらは急にはできません。
経験した市町村、団体、人の話を聞き、いざ自分のところでそのようなことが起きた時にはどうすればいいのかを平常時に話し合い、イメージしておくことが必要なのだと思うのです。
関東方面で南海トラフが起き、たくさんの人たちが東北に避難してくるかもしれません。その時は温かく迎え入れ、お手伝いしたいです。また、先日、震源地は全然遠いのに東北が大きく揺れましたが、ほんと何が起きるかわかりません。自分が遠くに避難しなければならなくなるかもしれません。
どちらにしてもしても、南三陸町の生活支援員さんが行った活動などを全国的に知ってもらえるような何か、例えばドキュメンタリー映画とかがあるといいなと強く思います。