滞った新規介護認定事務を進めた民間応援職員(宮城福祉会「うぐいすの里」)

前回は、業務請負型支援(富谷町・大和町保健師の活躍)をご照会いたしました。地元の行政がこの様な形で被災地南三陸町を支援していたことを知る事は、地元行政・職員の見方が変わり、これまで以上に連携協働の気持ちが強まるのではないでしょうか。

今回は、行政ではなく他地域の社会福祉法人職員が、介護保険業務を大きく進めた事例をご紹介します。その中での私の役割は、単に南三陸町の介護保険事務担当者に他市町村の社会福祉法人職員を紹介し、支援システムの基盤をつくっただけで何もしていません。

南三陸町保健福祉課では、近々介護認定審査会を開催して新規の介護認定作業を進めようとしているその時、東日本大震災(3月11日)があり、全ての新規認定のための書類が流されてしまい新規認定が出来なくなってしまいました。3年ごとに見直しのための更新認定は、特例により先延ばしが出来るようになったのですが、新規認定については、どうしても所定の認定手続きが必要でした。更に、震災により要介護状態に陥る人が増えて、新規認定申請も増えており、流されたてしまった新規認定の関係書類の再整備にあらたな申し出も加わり、事務作業が困難を極めていたのです。南三陸町は小規模な自治体なので、介護保険に関係する事務の担当者は一人の女性職員が一手に担っていました。

毎晩、遅くまで机にかじりつき悲壮な表情で事務処理を行っている職員の様子が気になり、お話しを聞くと上記のような状況でした。圧倒的に手数が足りなかったのです。地域包括センターからは、介護保険サービス利用が待ったなしで求められているという「やんやの催促」が重くのしかかり、更なる重圧の中での事務をこなしていました。

そこで、何とか介護認定事務作業を迅速に進めるためにはどうしたら良いのだろうかと色々と考えてみました。私の結論は、介護認定事務を担う人数を増やすことだとお思い、その人財探しに頭を向けました。そこで目を付けたのが、地域包括ケアセンターの事務を行政から委託されている実績のある社会福祉法人のケアマネや社会福祉士の知人に助っ人を依頼することでした。

この時ばかりは、「以前、宮城県庁長寿社会政策課でお世話になりました本間照雄です。お願いがあって電話しました」と、元県職員であったことを語りました。これに応じてくれたのが大河原社会福祉協議の職員と社会福祉法人宮城福祉会「うぐいすの里」(旧鶯沢町)の職員です。宮城福祉会では、継続的に人財を出してくれて長期の支援が行われ、介護編事務の停滞を避けることが出来き、新規の介護認定審査事務も軌道に乗ることができました。宮城福祉会「うぐいすの里」相馬さん、佐藤さん他にみなさんには本当に助けられました。

また、この時、介護保険制度の弱点にも気づきました。介護保険制度は、地方自治の「試金石」と称されるように、あらゆる事務事業が市町村単位で営まれることを前提としています。これは、地元市町村単位で福祉水準を選び「最適解」の下に介護サービスを提供しようとしています。このこと自体はとても大切な事なのですが、今回のように大きな災害に遭い、行政機能が麻痺する自体になると、基礎自治体単位で事務を簡潔するシステムの運用は大変難しくなるのです。実際、南三陸町では介護認定審査会の主要メンバーである医師が遠くに避難したりして地元にいなかったりして審査会を開くのが難しかったのです。

この為、県に被災沿岸部市町の介護認定審査会を代理してもらえないか提案したりしたのですが色よい返事は頂けませんでした。市町村単位で介護保険を設計している基本に関わることだったからです。今後、我が国では災害の「大規模化」「長期化」及び「広域化」が指摘されています。この様な中おいては、現行制度に震災対応システムを組み込んでおくことが喫緊の課題だと思っています。東日本大震災以降、この点での改正や運用が図られているかどうか追跡はしていませんが、震災を「伝える」中に、新たな備えとして、こうした視点も伝えてもらいたいと思っています。

大河原社会福祉協議会職員
正面二人(相馬さん・佐藤さん)
宮城福祉会「うぐいすの里」職員
入力データの復唱確認作業
データ打ち込み(相馬さん)
進め方の意見交換

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

滞った新規介護認定事務を進めた民間応援職員(宮城福祉会「うぐいすの里」)” に対して2件のコメントがあります。

  1. ハチドリ より:

    おはようございます。

    東日本大震災(3月11日)の津波で、全ての新規認定のための書類が流され、新規認定が出来なくなってしまったことや震災により要介護状態に陥る人が増えて、新規認定申請も増えたこと、さらに審査会の主要なメンバーの医師も不在・・

    改めて当時のことを想像してみましたが、担当職員の心労も、認定とサービス利用を待つ住民の皆さんの不安も図り知れず、考えてみても本当に本当に大変なことだったと思います。そして、この事務作業もまずはその方のお宅に訪問して心身の状況を一つ一つ調査することから始まり、その後の作業もいろいろあり、それらのことを総て把握している法人さんの協力をもらえたことは、先週の乳幼児健診のお話同様、どれほど心強く、助かったことでしょう。

    ぜひ、これも県は重要な記録として残し、今後に伝えていって欲しいですね。

  2. いくこ より:

    今週も胸が熱くなる思いで読ませて頂きました。
    先週も、写真の中によくお見かけする方々のお顔、ありがたいなぁとしみじみ思いました。
    先生は、紹介しただけと書いておられますが、やはりそれまでの有りようが橋渡し役の人の後押しをするのではないでしょうか。
    誠実に暮らすことがいつか人の役に立つと心にとめようと思います。

いくこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です