大学院指導教官から嬉しい返事

東北学院大学を退職する際に行った最終講義が同大学で出版する『災害学』vol.16(2022-03-25発刊)に掲載されました(p195-208)。その中でお名前を上げお世話になった方に本を送らせて頂きました。今回、返事を頂いた東北大学大学院、永井先生のメールをご本人の了解を得て掲載します。返事がとても嬉しかったのです。大学院で勉強して良かったと改めて思えたのです。以下、引用です。

本間さん 『震災学16』をお送りいただき、ありがとうございます。興味深く読ませていただきました。

わたしは、東北大学に入学されて以降の本間さんしか知りませんが、それ以前にいろいろとお考えになったことが、研究生活にも生きているということをあらためて感じました(そうでなければ、大学院に進むということを決断しなかったわけですから)。博士課程では、論文執筆には苦労されたことと思いますが、その基本にある感覚は十分に社会学的であったので、その点の矛盾はなかったことと思います。斎藤吉雄先生(東北学院大学大学院に在籍していたときの指導教官)は、つねづね「それは俺の教え方が良かったからだ」とおっしゃっていましたが、(多少はそのようなこともあるのかもしれませんが)本間さんの問題意識がもともと社会学的だった、ということだと思います。

本間さんが博士課程に進学されたころとは、かなり社会的な状況が変わり、福祉課題へのアプローチも、すこし立ち止まって考えなければならないように思います。例えば、地域福祉の定着は進みました。しかし、多くの自治体において「地域福祉計画」は作るだけになっていないか。住民参加といいつつ、住民丸投げではないか。人口構成の高齢化等の要因により地域福祉を支えるはずの地域社会の側が弱体化しているのではないか。地域福祉専門職の位置づけは高まったが、十分に役割を果たせているか(もちろんこれは専門職の問題というより、それをバックアップできるような仕組みを用意しない行政の問題でもあるのでしょうが)。地域福祉がベースになるといいつつ、結局は、福祉の分野別縦割りが再編・強化されただけではないのか。

また、東日本大震災被災地の状況についても、きちっとした出口が作れたわけではないように思います。

新型コロナ感染症が必ずしも終息とはいえないなかで、調査研究を進めることには困難がともないます。他方、留学生の受け入れを(講座維持の必要もあり)進めていますが、この人たちに現地を見せる必要があり、この点の対応も苦慮しています。

また本間さんにご助言をお願いすることがあると思います。そのときにはあらためてお願いさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 

東北大学大学院 永井彰

永井先生は東北大学大学院社会学研究室で学ぶことを志願した私を引き受け、指導してくれた先生です。博士課程に編入学してからは、先生の研究に付き添って長野県佐久市にある「佐久総合病院」(本院)及び小海分院・小海診療所等を調査に行ったりして、地域医療の先進事例を学ばせて頂いたりしました。また、広島県にある尾道総合医療センター「公立みつぎ総合病院」も視察し、保健・医療・福祉が一体的に提供されている先進的な取組を学びました。ここでは、急性期医療だけでなく、健康づくり等の保健活動、在宅医療、医療後の介護、更に施設サービスまでを幅広く提供されています。地域を軸足においた先進的な事例を目の当たりにして、改めて地域で様々な社会資源が連携して「地域住民の生活を守る」ことの大切さを学ばせて頂きました。ほんとうに有り難いことです。感謝という言葉でしかお返しできないのが申し訳ないです。

私は、大学院を修了しても、今なおご指導を頂いています。直接と言うことではありませんが、先生の論文を読んだりしながら、自分のものの見方にズレは無いか、情報が劣化していないか等々、学びは尽きません。そして、こうした機会を得て学んだことを地域社会に生かし、「共に生きる社会」(お互い様のある社会)づくりに励みたいと思っています。

社会学研究室にいたときの机と本棚

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

大学院指導教官から嬉しい返事” に対して1件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    既に卒業した大学院の指導教官からこの様に丁寧なお返事を頂くなんて、素晴らしいことです。
    「本間さんの問題意識がもともと社会学的だった」という言葉には、県職員として地域社会の様々な課題と向き合いながら身につけた感覚を認められていたということで、最高の褒め言葉ではないですか。
    そして永井先生は、研究者としてさらに幾つかの課題をお示しになられています。進んでも進んでもまだ研究は尽きないことに、飽くなき探究心を感じて鳥肌の立つような感覚を覚えました。
    この様な知的好奇心の渦の中で学んだ時間は、先生の宝物ですね。きっと、いつまでも色褪せることなく、これからも学ぶことを後押ししてくれるのでしょう。

    お互いを敬う素晴らしい師弟の姿を見せて頂いて感動しています。
    ありがとうございました。

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