SDGs 目標16 「平和と公正をすべての人に」
持続的開発を進めるためにも、人権や法の支配は尊重されなければならず、その透明性が高くて効率的な行政機関を作り上げることは必要不可欠です。しかし今も暴力を伴う紛争にさらされている人々が存在します。司法へのアクセスがなく、基本的な人権も保障されていません。このような状況を解決していくために掲げられたのがこの目標であり、「平和で包摂的な社会を促進し、全ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」を目指して、12項目のターゲットを策定しています。(出典:国際開発センター「平和と公正をすべての人に」,2018)
16.1 あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.4 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 2030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
世界では、今このページを見ている瞬間も紛争や戦争などが起きている地域があります。
そんな武力紛争の影響下にある国や地域に暮らす子どもはユニセフによれば2億4,600万人といわれます。世界中の人が、安心して生活して能力を発揮するには「平和」で「公正」な社会が必要です。目標16.「平和と公正をすべての人に」の推進は、誰もが公正に法制度を利用できるできるようにすることから生活の安定を図り、争いのない平和を実現していくことを目指しています。
様々な政情不安や政治への不信感の高まりなど、日本においてもなかなか平和と公正の保たれた中での生活は難しい状況ではあります。世界で見てみると、そもそも命の危険にさらされながらの生活をしている人々がたくさんいます。一人ひとりができることは小さいように思えるかもしれませんが、問題についての知識を深めて周囲の人に共有するのも取り組む人を増やすきっかけ作りです。
公正に関連する内容で、障害者法定雇用率というのをご存じでしょうか。法定雇用率とは、会社全体の常用労働者に対する障がい者の法律上満たすべき割合のことをいいます。すべての事業主はこの割合以上の障がい者を雇用するよう、障害者雇用促進法で義務づけられているのです。民間企業のみならず、国や地方公共団体などの行政機関でも法定雇用率を満たすことが義務とされています。
障がい者雇用について法定雇用率が定められているのには理由があります。私たちには憲法で「職業選択の自由」が保障されていますが、採用するほうもまた「採用の自由」が認められています。しかし、採用側の自由を無制限に認めてしまうと、障がい者のような、多くは生まれながらにしてハンデを背負った方が希望の職業につくチャンスを得にくくなってしまいます。このことから、法律で障がい者の雇用率に関する定めをもうけ、障がい者の雇用が促されるような仕組みを作っているのです。
障がい者雇用に対する理解は企業の間でも進んできてはいますが、法定雇用率の達成企業は48%に過ぎません。つまり、半数以上の企業では法定雇用率が達成できていないのです。
現在の法定雇用率は、民間企業:2.2%、国・地方自治体:2.5%、都道府県等の教育委員会:2.4%となっています。2021年3月1日からは、さらに0.1%ずつ引き上げられることとなりました。
宮城県の現状は、以下のようになっています。県の機関:2.81%(175人)、市町村:2.27%(624人)、県等の教育委員会:2.36%(416人)、民間企業:2.17%(6,235人←法定雇用率達成企業51.4%)となっています。行政は、法定雇用率を守っていますが、民間企業は達成率が半分程度に留まっています。行政は、法定雇用率を「守っている」レベルであって、決して積極的に雇用している状況にはありません。
障害者雇用における賃金の現状を見てみましょう。障害者の雇用では、大きく二つの支援を受けながら雇用されています。就労継続支援A型と同B型です。就労継続支援A型は、障害や難病のある方が、雇用契約を結んだ上で一定の支援がある職場(一般企業)で働きます。就労継続支援B型は、年齢や体力などの面で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練(福祉施設の作業所)を受けます。
2019(令和元)年度、宮城県内の就労継続支援A型事業所(雇用型)平均賃金は77,626円、同B型(福祉作業所)は17,477円です。
子どもの頃からの障害者のある方の主な収入源としては、障害基礎年金があります。障害2級(必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害)の場合は、65,075円/月(2021年度)です。これ以下の軽度の障害(3級)には受給資格はありません。障害基礎年金を受給しながら福祉作業所で仕事している場合は、82,552円/月の収入を得て家賃・食費を支払いながら知的障害者グループホーム等で自立した生活を送ります(大雑把な試算)。一方、生活の困窮した方への生活保護費(仙台市)は128,590円/月です。
障害者福祉施策は、その国の成熟度を現すと言われています。みなさんは、この試算の現状をどの様に受け止めるのでしょうか。障害者に関わる課題は、社会福祉に関わる問題としてのみ考えられがちなのですが、SDGs目標16の「公平」にも関わる課題なのです。
《参考》障がい者制度改革推進会議(第7回(H22.4.12))尾上委員発言
『1981年の国際障害者年の行動計画では「障害者を締め出す社会は弱くもろい社会」であるとの指摘がなされた。以降も、「障害者は高齢化社会の水先案内人」、「障害者問題は、その社会の豊かさのバロメーター」といったように、障害者の権利に関わる問題への取り組みは、(障害者のみならず)社会全体の豊かさや安心に大きく関係するとの提起がなされてきた。』