SDGs 目標8 「働きがいも経済成長も」

長期的な経済成長を続けるためには、産業の多様化より生産性の高い産業を図ることが必要となってきます。一方で経済活動とは、そこに就業する一人ひとりの働きによって成り立ち、それらを担う人々が獲得する収入や健康、教育、就業機会などの面において、著しく不利な立場に置かれる人々をなくし、適切な生活を持続的に営めなければ、経済成長を阻害することにもなりかねません。

そのため「包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」ことをこの目標8では目指しています。

これを実現するためにも12項目のターゲットを策定し、各国が目標達成のため取り組んでいます(出典:国際開発センター「働きがいも経済成長も」,2018)。

8.1     各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。

8.3     生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

8.4   2030 年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。

8.5     2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。

8.6     2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。

8.7        強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025 年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

8.8      移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。

8.9     2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

8.10  国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。

8.a        後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。

8.b   2020 年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

「SDGs 8.働きがいも、経済成長も」はいったいどのようなものなのでしょうか?ポイントは2つあります。1つ目は、生産性の向上と技術革新によって、持続的な経済成長を促進することです。これを達成するためには、起業や従業員の雇用を促すようにするだけでなく、強制労働や奴隷制、人身取引を根絶することも重要(世界では、まだこの様なことがあるのですね)といわれています。2つ目は、2030年までにすべての女性と男性の完全かつ生産的な雇用と、働きがいのある人間らしい仕事を達成することです。

現状は、世界の経済が回復を続けているものの、その成長スピードは遅く格差は広がり、雇用は労働力人口の成長に見合うペースで増加していません。国際労働機関(ILO)によると、2015年の失業者は2億400万人を超えていると言われていて、収入やその他の面における不平等は、長期的な経済成長を阻害するとも考えられています。

いくら産業を多様化し生産性の高い産業の拡大を図っても、従業員の収入や健康、教育などの面で著しく不利な立場に置かれてしまうとモチベーションや活力が低下し、生産性が下がるためです。適切な就業機会を得られない場合も同様です。なので、経済成長を促すのと並行して雇用環境で不平等に扱われる人たちをなくし、皆が適切な生活を持続的に営んでいくことが重要になります(個人的には、派遣形態の雇用が増えているのがとても気になります)

経済成長と雇用を促進するポイントは3つあります。1つは、不平等な雇用環境の改善です。現状は、これからの経済発展の主軸となる若者が仕事につけていないという深刻な状態なので、若者を中心とした雇用環境の改善が急務となっています。データで見てみると失業率全体としては改善しているのですが、15歳から24歳の若者の失業者数は全体の35%を占め、失業率でみると若者が13.1%に対して25歳以上の年長者の失業率は4.4%となっています(若者の3割は3年以内に離職しています。この現実は大きな問題です)。経済成長と雇用を促進する2つ目のポイントは、生産性向上の課題です。先進国の企業が、開発途上の国の労働者に対して技術やスキルをインプットしていくことで生産性が高まり、経済成長が可能になると考えられています。3つ目は、「働きがいのある人間らしい仕事」です。これは、「ディーセント・ワーク」とも言われているのですが、「権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」を意味します。もちろん、まず仕事があることが基本ですが、その仕事は、権利や社会保障が確保されていて、自由と平等が保障され、働く人々の生活が安定するといった人間としての尊厳を保てる生産的な仕事のことを指しています。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

SDGs 目標8 「働きがいも経済成長も」” に対して1件のコメントがあります。

  1. S.M より:

    開発途上国では未だに奴隷制に強制労働、人身売買といった厳しい現実に生きる人々が沢山いるのですね。世の中の不平等はあまりに残酷です。
    この現実に関心を持って我が身を振り返れば、知足をわきまえて暮らしたいものと思います。

    身近なところでは若者の離職率が高いとのこと。働く意欲はあっても、夢や希望を抱ける職場に巡り会うことはなかなか難しい。その代わりに自立した生活が送れる賃金水準かといえば、それも叶わない。
    その様な社会で家庭を持ち、将来的には親の介護もとなると無理があります。

    若い世代だけに将来不安の皺寄せが偏らないよう、親世代は出来るだけ長く自立した暮らしを送り、みんながイキイキと夢を語り合える世の中を目指していきたいですね。

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