新型コロナウイルス感染者国内確認から3年

新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから3年となりました。新型コロナウイルスは、国内では3年前の1月15日に初めて感染が確認され、厚生労働省のまとめでは、これまでに感染した人は累積で3100万人に、亡くなった人は6万2000人にのぼっています。新たな感染者や亡くなる人は増加が続き、収束の見通しが立たない中、感染拡大防止と社会経済活動の両立をどう図るのかが課題となっています。

2020(令和2)年1月16日、中国・武漢から帰国した神奈川県の男性に、国内で初めての感染者が確認されました。同年2月5日、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員のうち10人から新型コロナウイルスの感染が確認されました。2週間後、せきや発熱がなくウイルス検査で陰性だった乗客は、公共交通機関などで帰宅したが、その後に感染が判明した乗客もいました。

1月後半にもなると、国内の店頭ではマスクが品薄になり、除菌スプレーや除菌シートなどの衛生用品にも品薄の影響が広がりました。インターネット上では高額転売とみられるマスクの出品が目立ち、政府は3月にマスクの転売を禁じることを閣議決定しています。

この頃、私の問題関心はPCR検査にありました。遅々として進まないPCR検査に疑問があったのです。私の考える理由と同じような意見の書き込みがあったので、それを引用して整理してみます(参考:長野県長野市ゆうきクリニックHP)。以下、引用を下に編集。

我が国の感染症対策は、厚生省と国立感染症研究所(感染研)、国立国際医療研究センターが中心となり行なわれています。2020(令和2)年1月28日から、新型コロナウイルスのPCR検査は、国立感染症研究所(感染研)と全国約80か所にある傘下の地方衛生研究所で行われていました。

厚生労働省は2009年新型インフルエンザ流行後に感染症対策に関する報告書をまとめています。保健所の組織強化や人員増、PCR検査の体制強化が課題として明記されました。しかし、SARS、MERSの洗礼を受けなかったわが国では、PCR検査体制などの感染症対策に本腰を入れず、真逆にも財政健全化のために感染研の人員と予算を削減し、保健所の数も減らしていました。新型コロナウイルス感染症ではその付けが回わってきました。少ないPCR検査資源での苦肉の策がクラスター対策でした。感染者の数が少なければクラスター対策は有効かもしれませんが、感染経路不明者が多くなければ、ただでさえ少ない保健所の人員を更に疲弊させることになります。地方衛生研究所以外でも大学、民間検査会社でPCR検査は実施可能でしたが、厚労省と文科省の縦割り行政の壁や感染研が独自の試薬での検査にこだわったことで検査体制は拡充されることはありませんでした。この辺のことは一部の識者からは指摘いました。しかし、忖度があったのかこの指摘を深く検討する様子はありませんでした。

5月には厚労省は、政府中枢に説明する内部資料「不安解消のために、希望者に広く検査を受けられるようにすべきとの主張について」を作成しています。「PCR検査の感度70%、特異度は99%で、PCR検査は誤判定がある。検査しすぎれば陰性なのに入院する人が増え、医療崩壊の危険がある」との内容でした。PCR検査は原理的に特異度100%であるにも拘わらず、特異度99%と仮定してベイズの定理を適用、偽陽性が出ることを問題視しています。現実には、中国・北京市で1000万人規模のPCR検査を問題なく実施しています。全世界的にもPCR検査の偽陽性は問題になってはいません。PCR検査データを独占したい感染研の思惑と、PCR検査を減らすことで感染者数を抑え新型コロナ感染を矮小化し、オリンピックを行いたい政府側の思惑が一致してPCR検査が抑制されたかのようです。(以上、引用)

東京オリンピック・パラリンピックは、もともと2020(令和2年)の7月24日から8月9日と8月25日から9月6日にかけてそれぞれ開催される予定でした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月22日国際オリンピック委員会(IOC)は臨時理事会を開きました。IOCは東京五輪の延期を検討すると発表し、日本政府、東京都、大会組織委員会は23日、IOCが延期を決断した場合は容認する考えを示した。そして3月24日には、安倍晋三首相とIOCのトーマス・バッハ会長が電話協議し、1年程度延期することで合意。IOCはその後に開いた理事会で正式に延期を承認しています。

感染者数が3月25日以降に急増していることについて、ネットを中心に疑問の声があがっていました。特に3月24日に東京五輪の延期が発表された直後に小池都知事から「感染爆発の重大局面」と外出自粛が要請されたり、共同メッセージを出されたりしたから尚更です。「コロナよりオリンピック優先してたんじゃないの」「オリンピック延期になった途端に感染者が急増なんて分かりやすすぎて…」と、オリンピックを実施するために“正確な情報を隠していたのではないか”とする疑惑が巻き起こってしまいました。

真意のほどは、解明されていませんが、PCR検査数の増加や陽性者の延期決定後の増加は、こうした疑惑を持たせることにつながったことは疑いありません。こうした疑念を生む背景には、安倍元総理の強権的主導を始めとする国の発表に対する信頼が揺らいでいることがありそうです。

続けて、4月7日、安倍元首相は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、特別措置法に基づく緊急事態宣言を出しました。4月16日には対象区域を全国に拡大しています。新型コロナウイルスの感染防止策として、全戸に配った約466億円を投じた布マスクの配布は、4月17日から東京都内の一部で始まり、その後全国で行われました(我が家にも使われないまま残っています)。費用対効果などに疑問の声が上がっていましたが、この費用対効果の低さについて会計検査院は何も指摘しないことが極めて疑問です。

東日本大震災で使われたお金の検査で、会計検査院は、2000円ほどの神棚が補助対象外にして返還を命じています。沿岸部の人達は海への畏敬の念が強いので、当然のように働く場所に簡易の「神棚」を置いたりします。南三陸町被災者支援センターでも置いてあります。これは、神道という宗教ではなく、この地域では生活の一部だし、被災者支援を行う人達にも当たり前の風景です。でも、被災者支援に関係ないと判定されるのです。一方、だれも住んでいない海岸に数億円かけて防潮堤を築く。これって何なのって言う感じです(後日、知ったのですが「道路を守るため」とのことです、はぁ~?っ次の言葉が出ません)。

様々な経済対策が打ち出され実施されました。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた観光業への支援策「Go To トラベル」が7月22日、東京都を除外して始まり10月1日から東京都も対象になっています。更には、10月にはGo To イート。飲食店を支援です。また、現金給付として、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)において、全ての国民に対して一人当たり10万円が給付されました。これらは、乗数効果を狙ったものです。減税や給付金の支給などにも乗数効果は存在します。減税で所得が増えれば消費が増加、企業減税であれば設備投資の増加と、それぞれに連鎖的な需要増加が発生し、景気が良くなるということです。「定額給付金」や「子ども手当」も、同様の乗数効果を持っており、この乗数効果で需要を喚起し各事業所の支援を行おうとしているのです。

ある産業に新たな需要が生じ、その需要に対応する生産活動が拡大すると、原材料や資材などの取引や消費活動を通じ、他の産業に次々と、水面に投げた石が波紋を起こすように多方面へ影響を及ぼします。この過程のことを経済波及効果といいます。財・サービスの「購入→生産→販売」という連鎖的なつながりを表したのが産業連関表です。産業連関表の仕組みを利用して、ある産業に新たな需要が発生した場合にどういう形で生産が波及していくのかを計算することができます(経済波及効果(生産誘発額))。観光業や飲食業は、この波及効果が高いということでそれらの業種を対象として、「Go To トラベル」は「Go To イート」が行われました。

確かに、経済波及効果は高いかも知れないのですが、血税を使うのであれば、震災への備えに関する設備、例えば家庭用ソーラー発電設備や防災器具等々に消費を回し災害への備えや温暖化防止、更には原発からの脱却につながる消費につながるような施策が必要なのではないかと思います。血税を使って遊びほうけ、美食にうつつを抜かしていて良いのでしょうか。私は、「国民は、この様なことで喜ぶ」と、馬鹿にされているように思えてしまうのです。

三密避ける新しい生活様式が勧められました。スーパーやコンビニのレジでは一定間隔を空け、密閉空間を避ける。マスクの着用や手洗い、うがい。そしてテレワークなど、新しい生活様式が少しずつ日常になっていきました。

テレワークは、全く新しい仕事の仕方を提示し、今ではそれが定着しつつあります。地方でも仕事ができるという実証実験の場にもなりました。また、一ヶ所に集まって事を成すというこれまでの固定概念が大きく変わろうとしています。

DigitalとAnalog、バーチャルとリアルの融合は、これからの私たちの生活環境を大きく変える様相を示しています。

感染症は、「病気」(医学)の分野だけの話では無いことを示したということでも、大きな学びが私たちにはありました。感染症が、狭い範囲に限定されている段階では、感染症という病気そのものを見て、対策にしても取り扱いにしても、治療法も含めて、あくまで病気の話しだけで済みました。しかし、その感染が拡大していくと、私たちの生活に、もの凄い景況を与えるようになります。例えば、学校の休みを一つ取っても、子どもたちへの影響は病気だけではなく、子どもと子どもの関わりが無くなり、社会性の発達にも影響を与えます。経済的な影響も関わってくるので、まさに政治も絡んできます。更に国際政治や国際経済との関わりも複雑に絡み、一国の問題では済まない要素が関わってきます。ある識者は、新型コロナウイルスは『社会の病』だと言い、それだけ非常に複雑になっています。医学医療としての処方箋だけではなく、経済学の処方箋、社会学の処方箋といった、多方面の処方箋を必要とするのが、この新型コロナウイルス対策の現状から学んだと思っています。

私たちは、新型コロナウイルス感染症から何を学び、それを地域社会の中でどのように生かしていくのか。コロナ禍を理由に、これ幸いと地域で行われる様々な行事や手の掛かることを止めてしまったりしている様子も散見します。一方では、このままでは、これまで築いてきた学びの場が途絶えてしまうと、今できることを工夫して歩き始めている事例もあります。これらの選択は、それぞれの地域社会やその構成員の判断や努力によって、違った歩み方になっています。

この様なことについて、時々立ち止まり考えてみることも必要なのではないかと思い、新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから3年を機に、新しい社会の有り様をみなさんと一緒に考えてみたくて書いて見ました。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

新型コロナウイルス感染者国内確認から3年” に対して5件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    新型コロナウィルスに翻弄されて3年も経ちますが未だ有効な治療薬も無く、感染者には対処療法とマスクや消毒などの感染予防対策につとめる毎日です。

    誰もが、制約だらけの日々がこんなにも長期間続くとは思ってもみませんでしたね。さらには、まだ新規の感染者が沢山出続けて死者数も依然として減ることがないことに脅威と諦めの混じった複雑な気持ちです。
    この様な状況でこの感染症を第二類から第五類に変更する動きになっているとのことです。

    本当に大丈夫?疑心半疑ながら、これを聞いて制約から解き放たれ日常生活がようやく取り戻せると安堵の気持ちにはなりました。
    でも、もれなく基礎疾患が有り抵抗力の低い高齢者と毎日関わる職種の私達は、ここで今までの制約を一気に解いてしまうわけにはいかないでしょう。
    世の中の感染予防対策が緩めば、その反動が感染弱者に重くのしかかることを心に留めておかなければなりません。
    感染予防は一人ひとりの健康状態と生活様式に合わせて、個人の納得のいくように継続していくこと(自己責任)が必要でしょう。

    そうは言っても、私も日常の楽しみは必修科目として感染予防しながら謳歌していきたいと思っているところです。

    1. 鈴虫 より:

      疑心半疑という言葉は無いですね、大変失礼しました。
      (本当にそれでいいのだろうか)という気持ちは半信半疑と表すのが良いようです、勉強不足でした。

  2. いくこ より:

    先生、今朝もありがとうございます。
    いつも情報が隠され、自分で考えて選ぶことを阻害されている思いがあります。為政者は国民を信頼していないのでしょうね、国民もまたしかり。でもIT技術の発達により誰でも広く考えを発信できるようになってきました、隠されることがない世の中に向かうと思いたいです。想いがあってつながり合う人たちが世の中を変えて行くと願っています。

    追伸
    先生のページを音読することにしました、私には難しい聞きなれない単語が脳トレになると思って良いアイディアと自画自賛しています。

    1. welfare0622 より:

      いくこさん いつも素敵なコメントを有り難うございます。

      「音読」で脳トレ!とても良いアイデアだと思います。

      東北大学医学部の川島隆太先生(加齢医学研究所所長)は、音読の勧めを行っていました。何より、読む習慣は、生活リズムを整えたり、声を出すことで腹式呼吸に近い呼吸法になり、気持ちが晴れ晴れします。

      いくこさんのコメントを読み、私は、自分の書く文章がより読みやすくなるように心掛けたいと思いました。「自画自賛」ではなく、私にとても大切なご示唆を頂きました。

      有り難うございます。今後とも宜しくお願い致します。地域福祉研究所 本間

    2. ハチドリ より:

      いくこさん、『音読』と聴いて、あることを思い出しました。うちのお嫁ちゃんの妹さんの子育ての時の話です。
      新聞を読みたいのに子供が小さくてなかなか読めなかった時に、子供を膝に乗せ、まるで絵本を読むかのように新聞を音読したら、お利口さんにしてくれたと言うのです。きっと読み方もその子に話しかけるように読んだのかな?そしてその育児の仕方がNHKの子育ての番組で取り上げてもらい放送されたんですよ。10年以上前の話ですけど🥰

      新型コロナは『社会の病』とありました。世界中で猛威を奮った新型コロナ、マスメディアでしかわかりませんが、国によって考えや対応がずいぶん違うなあ~と感じたものでした。コロナに感染したと言うだけで隣近所から避難されたり、自死した若い女性等もおりましたね。とても悲しかったです。
      初期の国民への発信って、後々まで影響を及ぼします。

      新型コロナを第五類にするかの議論がされていますね。このようなことも含め、私たちも先生が最後にかかれた『時々立ち止まり考えてみること』は、とても必要なことだと思います。

welfare0622 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です