新しい思い出づくり

東日本大震災は、これまでの阪神淡路大震災や中越沖大地震などと違って、巨大津波による被害が甚大でした。津波は、根こそぎ生活を持ち去っていき、跡に残るのは住宅の基礎と瓦礫の山だけでした。

この為、風景は一変し、住宅の基礎撤去が終わった頃には、記憶を辿ろうにも目標になるものがなく、地元の人さえも場所が分からなくなるほど、原野化してしまいました。被災したみなさんは、過去の思い出が詰まったアルバムや記念になる様々なものが波にさらわれ、過去の楽しかった、頑張った、幸せが一杯詰まった記憶の薄れていくのを寂しがっていました。

私たちは、過去の記憶を思い出すときに、アルバムや思い出の詰まった物を手にして、語り合います。過去の写真は、私たちの記憶を呼び起こし、一瞬にしてその時、その場に戻してくれます。その、手がかりとなる写真や記念の物がなくなってしまったのです。

当時、ドロの中から散らばっている写真を集め、ドロを洗い落とし乾かすボランティもありました。南三陸町社会福祉協議会が運営する災害ボランティアセンターでは、佐藤町長の発案により有志チーム「思い出探し隊」が3月28日に災ボラの下に結成されました。泥に埋もれた町から写真、トロフィー、賞状などを拾い上げ、手作業で洗浄を行う地道な作業です。この作業で整理された写真は、ベイサイドアリーナ駐車場特設コンテナに設置された「思い出写真館」に収められました。保管写真15万枚が全てデータ化されており、館内のパソコンで閲覧することができます。これまで約3000人のご利用があり、保管数全体の1割弱に当たる1万2000枚の写真が持ち主の元に戻って行きました(2014/02現在/出典:南三陸町なう)。

毎日各戸を回り、被災者の一挙手一投足に目を凝らし、言葉に寄り添う南三陸町社協の生活支援員は、多くの被災者が、自分のいた場所も分からなくなり、思い出さえも消えかかろうとして、寂しい思いをしていることを見逃しませんでした。

生活支援員はこう言ったのです。「アルバムが無くなったのであれば新たにアルバムをつくればいい。新しい思い出で一杯にしてあげたい」と。

こうして始まったのは、様々な機会に写真を撮ってあげることでした。その為に、出来るだけ良い写真を撮ってあげようと、町内のプロのカメラマンに「写真の撮り方」の研修をしてもらったのです。多くの被災者は、災害から立ち上がろうとしている様子を写し取った写真を持っています。それは、南三陸町社協生活支援員が行った「新しい思い出づくり」の成果なのです。

デジカメ教室(2012/03/04)
修復作業(2011/05/02)
ドロから拾い上げ乾かしている写真
南三陸町社協災害ボランティアセンター

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

新しい思い出づくり” に対して5件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    ご紹介されたデジカメ講座に私も参加させて頂きました。

    講師先生は仮設住宅で三世代同居の家長さんでしたが、とても素敵な写真を撮る方だと知ったのはこの講座がきっかけでした。毎日の様にお伺いしていたのにこんな素敵な情報を引き出せていなかったことに、私達の活動もまだまだ未熟だなと思ったものです。

    さて、講座ではより良い写真の撮り方をデジカメの操作方(先ずはそこから 笑)や構図の取り方などを「なるほど!」と言いながら丁寧に教えて頂きました。

    講師先生が「被写体にもっと寄せると良いですよ」と言うと、いっせいに全員が腕を目一杯伸ばして、、「いやいや腕を伸ばすんでなくてズームが有りますから」という具合に大爆笑しながら、それは楽しい時間でした。
    その時に教わったズーム機能を駆使して、より生き生きとした写真が撮れるようになりました、なった筈でした(笑)

    この講座開催も「バッパホール」と同様の、埋もれてしまいそうな得意なことをお披露目することのひとつでしたね。
    素敵な出会いの場面がキラキラと蘇りました。

    今回も想い出の詰まった場面のご紹介をありがとうございました。

    1. ハチドリ より:

      鈴虫さん、おはようございます。
      国に出す資料作りが毎晩続き、締め切りの昨日ギリギリにやっと出すことができ、今朝は晴れ晴れとした気持ちで読んでいます。あら?知ってる可愛い女性が端っこの方で嬉しそうに写ってる( *´艸`)

      鈴虫さんのコメントはいつも先生の投稿記事をさらに「そうだったのね~」とイメージさせて、こちらもその場にいて一緒に何か (例えばズーム機能があるのにおもいきり腕をのばしてるとことか:笑) してるようなリアルな感情に包まれます。

      『埋もれてしまいそうな得意なことをお披露目することのひとつでしたね。』とありました。今、こちらで有志によるおせっかい訪問をしていますが、その時にその人の得意なことを聴こうねと意識しています。その話題はいつかどこかで・・と思っています。

      最後に『なった筈でした』?に、プッと吹いてしまいましたよ😂

      1. ハチドリ より:

        鈴虫さん、追伸です!
        1月9日だっけかな、宮城のお雑煮を作って高齢ご夫婦宅に持っていったら、これ食べてと渡されたのが焼き海苔でした。それは表には奥松島と書いてありましたが、製造者さんはなんと「南三陸町」のかたでした。
        とても美味しい芳ばしいパリパリの焼き海苔でしたよ🥰

        1. 鈴虫 より:

          あらまぁ、南三陸が奥松島に表示された焼き海苔があるのですね。
          どちらにしろ美味しくて良かったデスねー!

          同じように南三陸で育てられた牛も仙台牛とされているようですからね。
          まぁ、宮城県には変わり無いということですね😀

      2. 鈴虫 より:

        ハチドリさん
        大事な報告書を無事完成させた開放感、それはそれは素晴らしい朝でしたでしょう、お疲れさまでした!
        そのゆったりした朝に、嬉しいコメントをありがとうございました。

        私は自分で経験したことならば、その時の記憶を引っ張り出してみなさんにもお知らせしたいなぁと思ってコメントしております。
        でも時々、一個人の体験談に退屈な思いを抱かせてはいないかと考えることもありました。
        ですから、今回ハチドリさんが「一緒に何かしてるようなリアルな感情に包まれる」と言ってくださってホッとしました。
        ありがとうございます。

        ハチドリさん達のおせっかい訪問で、みなさんの得意なことを聴こうと意識することは「もっとあなたのことが知りたい」と相手に興味を示すことですよね。
        聴かれた方は最初は控え目に話し出し、相手が前のめりになる様子を確認すると次第に熱を帯びて話してくれると思います。
        なんだか私までその訪問の様子を思い浮かべてワクワクしてきます。一緒に訪問したいくらい!

        寒さが本格的になってきました。どうか体に気をつけながら、優しくて温かい訪問が重ねられますようにと応援しています。

        ハチドリさん、今回もありがとうございました。

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