励ましの手紙に応える(ビデオレター)

南三陸町の生活支援員は、きめ細かな見守り活動を基本としながらも、見守り以外にも被災者の想いをくみ取り様々な支援活動を行っています。今回ご紹介するのは、其の一つ、大阪府八尾市立北山本小学校へのお礼のビデオレターです。

被災地には全国からお見舞いや励ましの手紙が数多く届きました。被災した方々は、そうした手紙や色紙などに励まされ、長い避難生活を過ごしていました。生活支援員は、全国から頂いた手紙などを読みながら、「有り難いね~」等々といいながら回し読みをしている姿を見ていました。そうしているかなで生活支援員は、有り難い意という気持ちを何らかの形で表したいと思っている住民の気持ちを察し、「返事書いてみない?」等と促していました。

この様な経緯で行われたのが、手紙を送ってくれた小学校にお礼の返事「ビデオレター」を送ることでした。確か、真夏だったと思います。生活支援員は、応急仮設住宅団地の自治会長や住民、子どもたちにインタビューをして、その様子をビデオで撮ってお礼の返事をしたのです。

このビデオレターには、手紙へのお礼だけではなく、もう一つの目的が有り、被災地の現状を伝えるということも意識していました。

このようなことを考え実行する南三陸町の生活支援員は、本当に奇跡のおばちゃんたちです。被災者の想いに心を寄せつつ、被災地を気遣う子どもたちにも教育的配慮も欠かさない。このような心に染みこむ防災教育もあるのだと関心していました。

私の考える被災者支援は、被災者に寄り添い彼らの安心安全を支えると言うとこを第一にしながらも、支援して下さった方々への感謝を伝える機会を設けることや何らかのお返しの機会を設けることも視野にあります。被災者であっても、一方的に支援を受けるだけでは、彼らの尊厳が保てません。手紙を下さった子どもたちに少しでも勉強のお役に立てられたら、彼らの「結い返し」になる、そんな機会をつくることも被災者支援だと考えているのです。

長い避難生活を支えるということは、こうしたことへの意識も大切なのではないかと考えています。被災者に寄り添うとは、被災者としての彼らだけではなく、極々当たり前の「他者への感謝・お礼・役割」等々についても行えるように支える、これこそが弱者救済的な支援ではない、尊厳を保つ支援なのではないかと考えます。

ビデオレターくらいでそんな大げさなといわれそうですが、私はそう自分に言い聞かせ、南三陸町生活支援員を支えてきました。これは南三陸町被災者支援に関わらずです。特に、大切な人に頼まれたときには、それはそれは頑張ってしまいます。依頼してくれた方のイメージの倍返しを心がけ、常に下請けに身を事は落とすことは絶対に避け、自分の創意工夫を込めて意を尽くす。常に相手から目を離さずベストを尽くす、これが私の姿勢です。これは、大変な時でもそれを乗り越える原動力にもなっています。

仮設住宅自治会長インタビュー(2012/08/26)
子どもたちへのインタビュー
子どもたちの普段の様子を伝える
試作版で十分編集されていません(13分47秒)

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

励ましの手紙に応える(ビデオレター)” に対して3件のコメントがあります。

  1. 鈴虫 より:

    先生、今回も当時を思い出す素敵な事例のご紹介をありがとうございます。

    あの当時、被災地には実に沢山のご支援が寄せられて、失意のどん底から住民の気持ちを引き上げて頂きました。
    それらのご支援は顔の見える直接的なものばかりではなく、何処にお礼を申し上げれは良いのかわからないものも沢山寄せられていました。

    例えば仮設住宅を訪問中にも「私は東京の女性から着る物を沢山送ってもらったけど、名前しかわからない。是非、お礼がしたいのにどうすれは良いの」と聞かれることがありました。
    そんな時、私達支援員は先生から教わった「『恩送り』という方法でお返しをしてみましょう」とお話ししていました。
    頂いたご恩を直接返すことは叶わなくても、次の機会には自分がして頂いて有り難かったことを別な人にして差し上げようという『恩送り』を拡めていったのです。
    また、支援員が『恩送り』のご紹介と並行して取り組んでいたことは、「私達は地域みんなで手を取り合って前に進んでいるよ」ということを様々な場面で発信するように努めていました。

    以前このHPで「握りしめて温かくなっ100円玉」のお話がありました。
    ご支援を頂き「本当に有り難い、でも申し訳ない」という気持ちと「感謝してもしきれない、言葉にならない感謝の気持ち」がその100円玉に込められていたのだと思います。

    今回ご紹介して頂いたビデオレターには、頂いたご支援に対するお礼を伝える事が叶うという人々の安堵の気持ちが溢れているように感じています。

    この様な取り組みには、被災者を被災者としてだけ見るのではなく、この場所に暮らす〇〇さんとして一人ひとりの尊厳を大切にした関わりを紡いできた、全ての支援員達の頑張りがあらわれているのだと胸が熱くなりました。

    私はこの様な貴重な経験を重ねさせて頂いたという奇跡に、心から感謝の気持ちです。
    そしてこの大きな感謝を、私はまた次の人へと『恩送り』していこうと決めているのです。

    1. スマイル より:

      「尊厳を大切にした支援」という考え方、私も胸に刻みたいと思いました。そのような本間先生の信念が支援員さんたちにも浸透している様子が、お写真からもビデオレターからも伝わってきました。

      本当に写真を見るだけでもたくさんのことが伝わってきます。「支援が必要な人」という視点で見ているのではないこと、温かで親しくて普段から近所付き合いをしている人たちだと感じられる自然さにあふれています。写真は雄弁に物語ってくれますね。ここに書かれたことが真実だと教えてくれます。

      そしてまた、その経験を胸に鈴虫さんが「このような貴重な経験を重ねさせていただいたという奇跡」に心から感謝を感じて「私もまた恩送りしていこう」と誓っているということ。いつまでも心に残り、その後の人生を支え励ます経験となっているという奇跡もここにはあるのだと感じました。

      私が感動したのは、プランターで栽培したトマトの立派さ、畑で収穫したというジャガイモの大きさ!喜びをもって愛情をもって育てられたことが伝わってきて、そこにハッと胸をつかれました。言葉ではうまく表現できないのですが、そこにすごく大切なことがあると感じています。少しずつ自分で消化しながら、これからの自分のことも考えたいと思っています。

      本間先生、鈴虫さん、貴重なお話をありがとうございました。

      1. 鈴虫 より:

        スマイルさん
        ご支援頂いた小学生に宛てたお礼のビデオレターに込められた、みんなの想いをしっかり感じて頂けて嬉しいです。

        彼らは被災者とはいえ、ただ守られるだけの弱い人達ではなかったのです。

        それがハッキリとわかったのは、それぞれの仮設住宅の近くに借りた畑仕事が始まってからでした。みなさん生き生きと力強く土を耕し、立派な野菜を作りました。

        私達が支援していたのは野菜づくりのプロ、お料理のプロ、近所づきあいのプロ、そして生活のプロ集団だったのです!

        この気づきがあったからこそ、私達支援員は住民に対する尊敬の気持ちを持って訪問し、お話が出来たのだと思っています。

        今回のビデオレターのご紹介に対してスマイルさんから心のこもったコメントを頂いて、私がその当時どの様な気持ちで過ごしていたのかを振り返る良い機会となりました。

        ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です