老いとの折り合い

常々気になっていることがあります。世の中は健康に関する情報が溢れ、テレビや新聞・雑誌、インターネットでは健康増進の方法や健康食品の情報が押し売りの如く矢継ぎ早に送られてきます。このことは、健康不安をかき立てることにもなっています。また、歳を重ねること老いることが、マイナスの視点でのみ語られ、明日を迎えることに希望を持てない感情を持っている方々の多さがとても気になっています。

高齢者という言葉は、病気や介護という言葉とつながり、健康のために○○しなければいけない、介護予防、認知症予防のために○○する必要がある等々、健康や介護にならないように様々な行動制約や行動強制が語られます。健康や介護にならないように様々なことに「我慢」を強いられストレスが増している様子が見受けられます。健康や歳を重ねることに、不安が増す情報ばかりが、シャワーに用に降り注いでいることに、私は疑問を持っているのです。

現在勉強痛の参考図書二冊

Health(=健康)は、1948(昭和23)年に WHO 憲章で、健康とは「単に疾患がない、虚弱でないということではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態(well-being)」と定義されています。健康を人の権利であるとし、社会全体で取り組んでいく必要性をうたったのです。

リフ(Ryff)は、心理学的側面から良好な状態(ウェルビーイング)として次の6つがあると整理しています。

・自己受容:自分に対してポジティブな態度を持つこと

・他者とのポジティブな関係:他者とあたたかく満足できる信頼できる関係を持つこと

・自律性:自己決定ができて自立していること

・環境制御力:自分の周囲や環境に対応する能力と達成感があること

・人生における目的:人生の目標と方向性が持てている感覚があること

・人格的成長:成長し続けている感覚があること

この様に、「健康」=「病気ではない」ことではありません。身体的・精神的・社会的に調和のとれた状態を指します。誤解を恐れずに言えば、調和が取れたとは、その状況と折り合いを付けた状態と言えます。高齢で身体が若いときのように動かないのは当然です。その動きが弱った中で、生活の仕方を工夫したり道具を使ったりしながら弱ったからだと折り合いを付けた生活をすることです。若い頃のイメージや若い頃の気持ちを持ち続け、機能低下に抗って右往左往して「うつ状態」に成ったのではもともこもありません。

私たちは、もっと年齢を重ねることや年齢と共に何らの病気と付き合わなければいけないことに対して「負の感情」を持ち抗うだけではなく、年を取ることや病気がちになることは自然なこととして受け入れ、それと折り合いを付ける術を身に付けることに意識を向ける必要があると思うのです。

そして、そうした状況においても持てる役割や得られる楽しみがあることを知る必要があると思うのです。

こうしたことを民生委員・児童委員として、地域のご高齢の方々と一緒に学んでいきたいと思っています。こうした活動を通して、社会福祉は高齢者や障害者などのいわゆる生活に困難を抱えている人だけの施策では無く、全ての人のより良い生活の営みを支える為、よりよい地域社会づくりの為の積極的な施策なのだと言うことを実証していきたいと思っています。

高齢になっても、例え介護が必要になったとしても、何らかの役割を持ち社会の一員とし過ごすことができるよう「社会的定年無しの生涯現役」社会を築いていきたいと思っています。こうした想いを実現するためのヒント探しにこの本を今読んでいます。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

老いとの折り合い” に対して5件のコメントがあります。

  1. ハチドリ より:

    右側の本、「70歳が老化の分かれ道」を私もさっそく注文、昨日届きました。
    まだ、ペラっとしか見ていませんが、『何事においても「引退」などなどしてはいけない』など、いつまでも現役の市民であろうとすることが、老化を遅らせて長い晩年を元気に過ごす秘訣だと書いてありますね。また『定年後の喪失感をどう克服するか』も書いてありました。
    あれ?もう先生はその域に達した?とか思ってしまいました。お料理の一つもやってみるといいとも書いてありましたね。

    私の今度のお仕事の中に、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業と言うものがあるので、考え方など多いに参考にさせてもらいたいと思っています。

    1. 鈴虫 より:

      ハチドリさん
      早速、紹介された本を取り寄せて仕事に役立てようとしているのですね。流石です!

      私は今回は、ちょっとだけ他人事のように思ってしまいました。
      でも、ハチドリさんの新しい仕事で「高齢者の保健事業と介護予防の一体化の事業」というものに取り組まれると聞いて興味を覚えました。

      特に、介護予防といえばよくありがちな単純作業やドリル、健康体操などをイメージしています。
      でも、私がそれらの対象年齢になったら、例えばお料理やお裁縫、お買い物などの生活の中にある作業で機能の維持を図りたいなぁ。
      昔取った杵柄!みたいな得意なことを誰かに褒められながら、誰かの為にしたいです。
      大勢の中のひとりとしてみんなと一緒のことをするのではなくて、私のためのプログラムがあったら嬉しいなぁ。
      そして、介護予防が目的ではなく、その先に目標があれば自ずと介護からは距離が置けると思うんです。
      ほら、栗駒山に登ったちよのさんのように、叶えたい夢に向かって頑張るのが理想です!
      私もその様に歳を重ねていきたいと思っているのですよ。

      どうぞ、新鮮な仕事を楽しみながら素敵な事業を推し進めて下さいね✨
      応援しています。

      1. ハチドリ より:

        鈴虫さん、コメントをいただいてから2週間も経ってしまいました。ごめんなさいね😅

        鈴虫さんが書いてくれた『昔取った杵柄!みたいな得意なことを誰かに褒められながら、誰かの為にしたいです』っていいな~。そんなふうにして、いつまでも自分らしく暮らせたら幸せだろうなと思います。マズローの人間の欲求そのものですね。

        ありがとうございました💞

        1. 鈴虫 より:

          ハチドリさーん
          コメントに気がついてくれてありがとうございます♪
          「マズローの人間の欲求そのもの」そうですね。まさに基本中のキホンだということ、あらためてこころしなくちゃ!
          人それぞれに色んな欲が有ると思うのですが、基本が押さえてあれば大体のところは御の字だということなのですね。
          私は歳とともに物欲が薄れ、食欲がそれに反比例しています🤣

          1. ハチドリ より:

            鈴虫さん、食欲、それこそ人間の欲求の基本中の基本かと😂☝️我慢しないでいきましょう、お互いに!

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