お正月を迎える準備

今年も残すところあとわずか。街からジングルベルが聞こえなくなると「もう幾つ寝ると・・・」に変わり、師走感が一気に高まります。普段、家事には全くと言って良いほど手を出していない私でさせ、お風呂や窓掃除そして書斎の重なった本や雑誌そして新聞の切り抜き等々の整理整頓を始めたりします。

いつもお世話になっているご家族では、奥さんの実家に娘を連れて行き、実家のお母さん本人そして娘の三世代が一緒に台所に立ち、正月料理をつくるそうです。親、子そして孫と一緒に立つ台所では、生活の知恵や思いで話しが語られ、生活文化や家庭の味が伝わっているのでしょう。お重に盛られた伝統的な正月料理は、見た目や味だけではなく、想いや愛情までもが盛り込まれているようです。私は、そんな情景にとても憧れます。

このような様子を見聞きしながら、東日本大震災から10年の被災地を改めて調査したときのことを思い出しました。

お店に並ぶ正月料理

被災地南三陸町にも当たり前ですが正月はやって来ます。高齢者からお話を聞くと、被災後は、正月を迎えても楽しくない、ワクワク感がないと言うのです。東日本大震災後、様々な伝統的な家庭行事の簡素化は一気に進んだといいます。これまで伝統的行事で使うものは、年男(=家長)としての高齢者がその全てを手作りで揃えていました。それが、住宅再建という機会と通して突然の代替わりが起き、手作りの技術や作法をまだ身に付けていない若夫婦に活用としての役割が移り、これまでの当たり前が特別なことに変わってしまい、簡素化に拍車をかけたのです。震災は、伝統的な歳時行事の技術や作法を伝え残す時間さえも奪ったのです。加えて、何日も前から正月飾りの材料を取りに山に入って枝を切り出し、わらを打ち縄をなう役割も高齢者から奪ったのです。

高台に再建された自宅や災害公営住宅は、効率的でお洒落な洋風化した住宅になりました。こうした、住宅の洋風化は伝統的な行事に必要なしつらえを拒んだのです。従来の門松は、玄関の両脇に大きな松の枝と笹竹を二本一対にして、その間にしめ飾りを取り付ける鳥居の様な姿をしていました。しかし、こうした伝統的な門松は、住宅の洋風化によって引き戸から開き戸に変わることで、設置が難しくなったのです。こうした事例は多々あります。また、「震災だから今は仕方ない」という一時的な簡素化が恒常化している様子も見受けられます。

わずかな時間の一時的な簡素化や省略が、後戻りできない取り返しの付かない状況を生んだいる感じがします。時代の要請がそうさせているという言い方もあると思うのですが、私は、先に書いた三世代が一緒に正月料理をつくるという「てまひま」は、こうした後戻りできかくなる生活文化を、庶民の暮らしの中で繋ぎ息づかせている大切な時間になっていると思うのです。こうしたことを大切にするという姿勢は、地域づくりという視点でもとても大切です。今あること、今あるものを大切に守りつなぐという姿勢が、地に足付いた活動を生み出すと思うのです。出来合いで簡単に済ます、時短料理で効率的に、人様々なのだと思うのですが、後戻りできない取り返しの付かない状況だけは避けたいモノです。

スーパーに行ったらお正月料理がきれいに並んでいました。若い人だけでなく、そこそこの年齢の方も手に取っています。つくる身になって考えるとなかなかきれい事だけでは済まないのかも知れません。でも、私たち日本人は、四季折々の変化を季節の料理や行事食という形で楽しみ愛でてきました。たまにで良いから、「てまひま」かけて季節にあった料理や行事にあった食事に取り組む。そんな余裕を持ちたいですね。我が家では、あんこづくりが始まったようです。あんこが嫌いな隣の孫は、家のあんこだけは食べてくれます。何が違うのかわかりません。「おいしくな~れ、おいしくな~れ」と魔法をかけているのでしょうか。

皆様からの感想・ご意見などをお待ちしています。

お正月を迎える準備” に対して9件のコメントがあります。

  1. welfare0622 より:

    私がお世話になっている方の三世代並んでお節料理づくりから始まった、おせちやあんこ作りに鈴虫さんやハチドリさんに加わって頂きました。日本語で書いてあるのに、その内容は私にはちんぷんかんぷん???。日頃から台所に立っていないのがよくわかりますよね。皆さんの手塩にかけてつくるお料理への心配りやその時々の母との関わりなどが見えるようです。

    私は、中新田の母を思い出すような食事にはなかなか出会っていないのですが、その違いだけはわかるようです。小さいころに母親に作ってもらった食事の味は一生ものだとつくづく思います。みなさんのコメントを読んでそんなことを思い出しています。

    1. 鈴虫 より:

      まるで先生とハチドリさんと鼎談しているみたいです♪
      今夜のテーマは『正月料理にまつわる話』

      私もいかにんじん作りました!お煮しめとお雑煮の下準備も完了です。
      そして、今夜、干し柿とスパークリングワイン頂きました、美味しかったです!
      ハチドリさんとは味覚の趣味が合うみたいで、とっても嬉しいです😆

      1. ハチドリ より:

        鈴虫さん、とても嬉しいです。もしかしたらいかにんじんのことを知ってらっしゃるのではと思っていました。新年はそれで日本酒ですかね?
        温かい新年をお迎えくださいね。

      2. 鈴虫 より:

        いかにんじんも、さいちのおはぎも、有名な郷土食ですね😋ケンミンショーでもやっていました!
        食いしん坊な鈴虫です♪
        よいお年越しを✨

    2. ハチドリ より:

      本間先生、ちんぷんかんぷん・・かもしれませんが、社会的想像力で頑張ってみてください。(笑)
      では、良いお年をお迎えください。

  2. ハチドリ より:

    私の孫(女の子)は何でもよく食べるのですが、なぜかあんこは苦手なようで、さいちのおはぎをたくさん買ってお土産に持って行ったのに、喜んで食べてくれたのはママとパパでした😅でも、お年頃になったら、何かのきっかけであんこもきっと好きになってくれるような気がします。

    3世代でお正月のおせち料理を作る、本当に羨ましいです。美味しいのがたくさんできたことでしょう!
    私の両親が生きていた頃、春になると父親はゼンマイを採りに行き、手間ひまかけて乾燥させていました。それを母は年末になると水に漬けて柔らかく戻し、おせち料理として丸い麩や椎茸などとたくさんの煮しめを作っていました。ゼンマイはお雑煮に入れてもとても美味しいのです。とても懐かしいです。来年の春はゼンマイ採りに行こうかな!と、紅白歌合戦、ちょうど今、🎵マツケンサンバ~🎵を見ながら夢を膨らましています。

    1. 鈴虫 より:

      ハチドリさん、ゼンマイのくだりで喜んでいます。
      うちの義母が山菜採りの名人で、ゼンマイも沢山採って来ては、干しては揉みを繰り返していたのを懐かしく思い出しています。
      当時は、美味しい山の幸も不自由なく食べられていましたが、義母なき後には道の駅などで小さな袋入りを買わねばならず寂しいです。
      思い出したら無性に食べたくなっちゃいました。

      年の瀬に、義母の丸い背中とおふくろの味を思い出させて頂きました。
      どうもありがとうございます!

      来年もどうぞよろしくお願い致します😊

  3. 鈴虫 より:

    あんこづくりで、懐かしい場面を思い出しました。
    子供のころ、母が煮た小豆をサラシの袋で絞って、その汁の入った鍋を焦さないように番をするのが年の瀬の私のお手伝いでした。
    いい匂いと、たまにぷつぷつとはねる感じ、いいですね〜!
    割烹着姿の母の背を見ながら、あんこを舐めていた懐かしい光景です。

    三世代並んでお節料理を作るなんて、絵に描いたような幸せな様子は本当に羨ましい、ドラマみたいです。
    母も娘も居ない私は、母の思い出と一緒に台所に立つとしましょう。

    1. ハチドリ より:

      鈴虫さん、「子供のころ、母が煮た小豆をサラシの袋で絞って、その汁の入った鍋を焦さないように番をするのが年の瀬の私のお手伝いでした。」を読んで、私の「こし餡作りの 穴があったら入りたい思い出」を思い出しました。
      小豆を水に漬けてうるかし、煮るまでは良かったのですが、問題はその後に起きました。もう想像はついたのでは?(笑)
      そうです。サラシの袋に入れて絞りながら、何を勘違いしたのか、袋の中に残るのがあんこだと思い、本来こし餡になるはずのサラサラのあんは水と一緒に排水口の中へ(#゚Д゚)y-~~
      2/3くらい進んだあたりでハッと気づき、私はどうしようもない言い訳をしたのだと思います。でも、母は偉大でした!少しも怒らず、最初からやり直しをさせてくれたんです。母との思い出、私は娘にそんな風にできているかな?
      今年は春にヨモギ団子を食べるのにつぶ餡作りをしました。バニラアイスも乗っけてとても美味しかった😋☝️

      宮城にいた時に、福島県出身の人から教えてもらった「イカにんじん」、昨夜たっぷり作りました。郷土料理のようで、スーパーでは年中売られているのですが、福島県に来てからは私はおせち料理の一つとして作っています。

      では、良いお年をお迎えくださいね

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